孫子の兵法 33 反間計
孫子の兵法 33 反間計
第三十三計 反間計「反間の計(はんかんのけい)」
楚の項羽は、漢の劉邦に使者を送った。
劉邦は使者をまるで王侯貴族のように扱い、接待をしたが、
直接に会って顔をみるなり「何だ、范増殿の使者ではないのか」と言って、豪華な料理を下げさせた。
この使者の話を聞いた項羽は、軍師の范増が裏切ったのではないかと疑い、彼の提言を聞かなくなった。
怒った范増は項羽の元を去り、楚に軍師がいなくなってしまった。
戦国時代の燕で、昭王が没した後をついだ恵王は、太子だったころから将軍の樂毅とそりがあわなかった。
斉の将軍の田単は反間を放ってこう言わせた。「樂毅は燕王といさかいがあって、殺されることを恐れ、兵を集めて斉で独立して王となろうとしている。
だが、斉はまだ服属していないので、しばらく即墨を攻略する手を緩め、時機を待っているのである。斉が恐れているのは、他の将が来て、即墨が陥落することだ」。
恵王はこれを聞いて、すぐに騎劫を後継の将とした。このため、樂毅は趙に亡命するしかなかった。
三国時代、呉の周瑜が曹操の間諜を使って、曹操側の将軍を離間させたのも、疑中の疑を使ったものである。
赤壁の戦いで孫権側の総指揮を執るのは才人周瑜であった。
赤壁の戦いの前、蒋幹という男が周瑜の学友として名乗り出た。
蒋幹は「三寸不爛の舌先で周瑜をだましてみせましょう」と曹操に言い、曹操はさっそく、呉に蒋幹をスパイとして送り込んだ。
蒋幹は周瑜と面談を求め、周瑜はこれを快諾した。
周瑜は蒋幹がスパイだというのはばれている。
周瑜は最初から蒋幹を逆用してやるつもりだったのである。
酒を飲み談笑したあと周瑜は狸寝入りを決め込んだ。
蒋幹はタヌキ寝入りとも知らず、周瑜の机の上の密書を覗く。その密書には、蔡瑁の裏切りに関する事項が書いてある。
蔡瑁はこの時、曹操軍の陣営において、勿論、周瑜のでっち上げである。
蔡瑁は曹操陣営の水軍の指揮を執ることができる数少ない将である。
それも、荊州で最近登用したばかりの将であることから、信頼も薄い。
蔡瑁さえ葬れば水軍は瓦解したも同然で、周瑜は蔡瑁を曹操の手で除かせるように計ったのである。
蒋幹はこれを信じ込み、早速曹操に報告した。
曹操も怒り心頭に発し、蔡瑁を斬首させたのである。
後で周瑜の謀と知ったときにはもう遅かった。
反間計は、偽情報を流したり、間者(スパイ)を利用して、相手を混乱させる計略です。
この混乱は、情報操作により、敵方をお互いを疑心暗鬼にさせます。
反間とは、自分に仕掛けられた離間策を逆に利用して、敵を離間させることです。
遍く戦争とは情報戦であり、実際、孫子はスパイの重要性を説いています。
戦争を行うにあたって判断を下す材料となりうるものは占いや過去の経験則でなく、スパイから得た情報のみです
一般にスパイは、敵対勢力などの情報を得るため、合法違法を問わずに敵の情報を入手したり、諜報活動などをする者の総称です。
スパイは、間者、間諜、密偵、工作員、情報機関員とも呼ばれています。
ちなみに、孫子には、敵国住民のスパイ(郷間)、敵国役人のスパイ(内間)、敵国スパイをこちら側に取り込んだもの(反間)、敵国に潜入し偽情報を流すもの(死間)、生きて情報をもたらすもの(生間)の五種類があげられています。
孫子は中でも、敵国のスパイを見つけることは情報漏洩を防ぐ以外の目的でも重要となると考えていました。なぜなら、自らが放ったスパイが持ってきた間違った情報で動けば、逆に、敵の行動を操ることができると考えました。敵諜報員にわざと偽情報をながして逆用すると言う方法です。
この方法は、自ら失うことがありません。
さらに、偽情報は、敵方の諜報員を探し出す方法としても使えます。
特に反間を重要視している。
それは反間が機能すれば、郷間や内間が養成され、死間や生間が働きやすくなるからです。
このように、情報には虚実があるものと考えて、常に疑う事が大事という意味でもあります。
情報の取り扱いこそが、運命の分かれ道といえるかもしれません。
反間計では、このスパイに情報を得るのではなく、逆に間違った情報を流す役割を与えられます。
さて、反間計は、現代において、どのような活用方法があるでしょうか。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ
相手を屈服させる、または意に従わせるようにするためには、まずその人が頼みとしているものから攻め落としていくのが良いというたとえです。
反間計では、まさに、相手の頼りにしている人をターゲットにする計です。
現代の場合は、将を倒すというよりも、将を口説き落とすことが大切です。
直接、相手を口説くことも方法ですが、口説く相手の頼りにしている人をまず口説く、間接的に入ってくる情報は自分と、頼りにしている人からの2人以上の情報なので、客観性を帯びるので信頼しやすくなるのです。
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