孫子の兵法 17 抛磚引玉
第十七計 抛磚引玉「磚を抛げて玉を引く(れんがをなげて、ぎょくをひく)」
匈奴と漢が戦争を起こした時、漢の兵士に多くの凍死者が出
たそうです。
この状況に思案をめぐらせていたとき、急に匈奴が退却した
と知らせが入ったそうです。
そこで、漢は、この寒さで、匈奴も凍死者に困って退却した
のだと判断し、追撃を試みたそうです。
しかし、それは匈奴の罠でした。
その結果、いうまでもなく、漢は大軍で逆襲されてしまった
そうです。
抛磚引玉は、囮を使って敵を誘い出す、海老で鯛を釣る戦法です。
敵を誘い出す方法はきわめて多くありますが、敵を誘うには、大きく分けて、「擬似」と「類同」の2種類あるそうです。
擬似とは偽物などを利用した誘い、類同とはこちらが弱っているなどと思わせる誘い方です。
擬似の具体例としては、戦意のある敵に対して、誰も居ない場所で旗や太鼓を叩いて、そこに人がいるように見せかけて誘い込むのが擬似です。
類似の具体例としては、老人・病人、兵糧・薪を使ったり、自軍に食料がない、などと思わせて、今攻めるのが有利と思わせて誘い込むのが類同になります。
兵法においては、擬似は見破り易く、類同は見破られ難いそうです。
つまり、擬似は警戒感を刺激するのに対し、類同は、敵からすれば美味しい餌であり、敵の油断を誘発させ、心に隙をつくるからでしょう。
さて、抛磚引玉は囮戦術ですから、これは、李代桃僵に通じるものがあります。
李代桃僵の場合は、小さな犠牲を払って、大きな勝利を得やすくするという、ことであり、味方の損害を有利に活かせというものです。
それに対して、抛磚引玉は敵を誘き出すために囮を利用するものです。
とどのつまりは、「海老で鯛を釣る」策略だといえるでしょう。
ですから、相手がほしがるような囮をちらつかせ、とびついてきた敵に対して、罠をしかけるわけです。
ポイントはとしては、二つあります。
1・相手が信じたがる囮であること。
2・囮が囮としてみやぶられないこと。
この2点を、どのように工夫するかが、この策略の成否を決定するといえるでしょう。
1のポイントについては、自分が相手の立場に立って考えてみることです。
その上で、2のポイントのために、囮に不自然さをださないことになるでしょう。
さて、現代において、抛磚引玉はどのような利用方法があるでしょうか?
それは、議論や交渉に使えます。
まず、最初に、タダで譲っていいものを用意します。
そして、それに事前に値札をつけたり、一般的な相場を参考にして、価値あるものと見せておきます。
最初からタダで譲ってもいいために用意したので、それで買ってもらえば利益があるわけです。
もちろん、それをタダで譲っておいて、相手の気分を良くしておいて、次の交渉に入りやすくするという方法もあります。
この譲っていいものは、物でなくてもかまいません。
たとえば、主張です。
議題や主張において、同様のことがいえます。
最初から妥協してもいいことを、妥協しないように主張した後、議論後に妥協します。
すると、相手からは話のわかるやつだと思われ、その後の議論も円滑になります。
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