ヒアシンスの絆 後編(呟き尾形の創作童話)
呟き尾形の創作童話・小説
呟き尾形の創作童話・小説は、私、呟き尾形が創作した童話や小説を掲載するコンテンツです。
既存の童話や小説や新たにかいたものも気まぐれにアップしていく予定です。
花をテーマにした童話です。
今回は、ヒアシンスをテーマにしました。
長くなったので、前編、後編とわかれています。
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ヒアシンスの絆 後編
さてさて、前回は、ハイアシンスは、ヘリオスを助けるために、すぐさま西風の神殿に向けて走り出したところで終わったよね。
その続きだよ。
競技場での出来事の一部始終を高みの見物をしていたのはプルートーンです。
プルートーンは、早速、使い魔を召還します。
「なんでがしょ」
「まず、ハイアシンスのもって行く水筒にこの岩石をまぜるのだ。
この岩塩は魔法の岩塩で、これが溶かされた水を飲むと、のどが死ぬほど乾
くのだ。
そして、塩の森に行ってきて、道しるべを壊して来い。
最初の道しるべで間違えば、塩の森は、迷路のようなものだ」
「わがりやした」
使い魔はすぐさま、塩の森の手前に行って、老人に化けてハイアシンスを待
ち伏せします。
すると、汗を流しながら走ってくるハイアシンスを呼び止めます。
「そこの若いお方、その水筒の水を少しだけ分けてくれぬか」
老人に化けた使い魔は、よぼよぼの声でハイアシンスに声をかけます。
ハイアシンスは老人がかわいそうにおもって、水筒を老人に渡します。
「ご老人、水筒の水はすべて差し上げよう。
すまないが私は急いでいる」
そういって、ハイアシンスは走り去ってしまいました。
慌てふためいたのは使い魔です。
「ちくようめ!
あの馬鹿、全部、俺に水を渡しやがった。
これじゃぁ、プルートーン様に叱られる!」
使い魔は、その場で考えたとき、良い案を思いつきました。
使い魔は、「よし」と自分の考えにうなづきながら道しるべまで先回りして
飛んで行きます。
そして、使い魔は道しるべの下に、「西風の神殿」と書かれている文字を魔法で、「湧き水 のどが渇いた方はこちら 寄り道にどうぞ」と書き換えて道しるべの示す矢印を変えたのです。
いくらなんでもここまでずっと走ってくれば、のどはカラカラのはずです。使い魔はその先に湧き水を魔法で作った後に、プルートーンに渡された魔法の岩塩をポチャリと落とします。
すると、湧き水は見るからに美味しそうな水に変わります。
魔法の岩塩は、その水を美味しそうに見せるために甘い香りを出すからです。
「美味そうだな」
と、使い魔は、思わずつばを飲み込みました。
一方、ハイアシンスが道しるべのところへついています。
「なになに、”湧き水 のどが渇いた方はこちら 寄り道にどうぞ”だって?
そういえば、のどはカラカラだ。水はさっきの老人にやってしまったし。
少しぐらいなら・・・。
いやいや、だめだだめだ。
私に寄り道をする時間など無い。こっちが寄り道なら、こっちは近道だな」
ハイアシンスは、道しるべとは逆の方、つまり、西風の神殿の方へ走り去って行きました。
そのころ、使い魔は、まてどもまてどもハイアシンスがこないことに、イライラしていました。
それも、目の前には、美味しそうな甘い香りの水がたくさんあります。
これが、使い魔の気持ちをあせらせ、のどを乾かします。
ついに、使いは、のどが渇く水だと知っていても誘惑に負けて、湧き水を飲んでしまいました。
使い魔が、一口飲むと、もう一口欲しくなります。
その一口飲むと、もう一口と、とまらなくなってしまいます。
ついには、一気に湧き水をすべて飲み干してしまったのです。
すべてを飲み干しても、まだのどの渇きを感じているのですが、ここでようやく大事な事を思い出します。
まだ、ハイアシンスがこないのは、おかしく、それは、ハイアシンスが西風の神殿への道を正しく進んでいるということです。
使い魔は、地団駄を踏みながら、急いで西風の神殿へ向かいますが、ハイアシンスは、すでに西風の到着していました。
ハイアシンスは、西風の神殿の中庭にはいると、甘い香りと美しい花色に思わず、見とれてしまいます。
ヒアシンスの花は、短い花茎にぎっしりと小花をつけています。中には、透明な容器に水栽培されたものがあり、花色は赤、桃、白、青、紫、黄、橙などさまざまな色のヒアシンスがありました。
「旅のお方、その汗のかきよう、さぞかしのどが渇かれたでしょう。
まずは、水をどうぞ」
神殿の神官がコップに入った水を差し出すと、ハイアシンスは礼を言った後に、その水を飲み干します。
「ありがとうございます。
友人を助けるために、ひとつ、ヒアシンスの球根が欲しいのです」
「いいでしょう。明日にでも、もって行きなさい。今日はひとまず休みなさい」
ハイアシンスは神官の言葉に甘えたかったのですが、日没前に闘技場へヒアシンスの球根をもっていかねば、ヘリオスを救えません。
「もう十分休ませていただきました、あの太陽が落ちる前に闘技場へ戻らねばなりません」ハイアシンスは、もっと水が欲しいのをぐっとこらえました。
「なんと、まさか、塩の森を通り抜けてきたのですか!」
神官は目を見開きます。
「はい。私のせいで、友人は大きな怪我をしました。
だから、私は命がけで友人を救わねばなりません。
そのためにはヒアシンスの球根が必要なのです」
「わかりました」
西風の神殿の神官は、神殿の奥に入ると、ヒアシンスの球根と、小袋をひとつをハイアシンスに手渡しました。
「この小袋は、神の加護を得られるお守りです。あなたの決意の強さに応じて、あなたを手助けしてくれる事でしょう。
しかし、その決意がくじけるとき、お守りはあなたに災いをまねくことでしょう。
あなたに、このお守りを持つ勇気がありますか?」
ハイアシンスは自分の決意の強さに疑いを持つ事はありませんでした。
ハイアシンスはそのまま闘技場にむけて走り出しました。
しかし、西風の神殿までずっと走り続けていたハイアシンスは、疲れとのどの渇きで走る速さが遅くなってしまっています。
それではいけない。
とハイアシンスは、もっと早く走ろうとするのですが、体が言う事をききません。その上、懐のお守りがどんどん重くなっていきます。
あせれば、あせるほど、日が西風の神殿の方に傾きます。
やがて、ハイアシンスは、歩く速度より遅くなり、立ち止まってしまいました。
「ああ、やっぱり、神官の言うとおり、もう少し休んでいればよかった。
もっと、水を飲んでいれば、体が言う事を聞いてくれたのかもしれない。
もうだめだ。あんなに、日も西に傾いている。
そもそも、本当に俺に、関係があったのか?
ダメでもともとのはずだ。
たとえ間に合わなくても仕方の無い事だ。
だれも責めもしないし、むしろ、俺の努力に、みんな認めてくれるはずだ・・・。
そうだ。まず、この重い小袋を捨ててしまおう。
もともと、目的は球根だ。
間に合わなくとも、球根さえあれば、俺の名誉はまもられる・・・」
ハイアシンスは、その場に倒れこんでしまいます。
「いや、違う。
他人がどうおもうかなんかじゃない。
自分がどうおもうかだ。ここであきらめたら俺は、一生後悔するだろう。
そんなのは・・・。
絶対に、いやだ!」
ハイアシンスは、立ち上がり、再びフラフラと立ち上がります。
そして、もうすぐ、塩の森に指しかかろうとしたとき、そこに待ち受けていたのは、使い魔です。
「オイラを導く魔の力があるとおもえば、ハイアシンスか!」
ハイアシンスは懐のお守りを握りながら神官の言葉を思い出しました。
”その決意がくじけるとき、お守りはあなたに災いをまねくことでしょう”
ハイアシンスは、自分の軽率さを恥じました。
ハイアシンスは、自分の決意の強さなど、疲れ後時でくじけそうになる程度のもの。と痛感しました。それが、目の前の災いを招いているのだと。
「おのれ、ハイハシンス! 次から次へとオイラの邪魔ばかりして!」
使い魔は、ハイアシンスを憎憎しげに指差します。
「なにをいう、俺はオマエの事なんて知らないぞ」
「うるさい! オマエなんか雨風でどこかへ飛ばされるなりながされるなりしてしまえ!」
使い魔は、魔法で嵐を起こします。
風はうなり、大地は地鳴りを起こしたようにゴウゴウと音をたてます。
そして、雨は滝のようにハイアシンスに降り注ぎます。
しかし、苦痛になるはずの雨風は、ハイアシンスにとって、恵みの雨、恵みの風となりました。
なぜか、雨は、体の渇きを潤し、風が疲れを洗い流してくれます。
ハイアシンスがお守りを握ると、どんどん力があふれてきます。
すると、西風の神殿から、突風がやってくると、ハイアシンスの体をふわりと浮き上がらせ、塩の森を一気に飛び越え、闘技場まで飛ばしてくれます。
ハイアシンスは闘技場に掲げられた、旗に包まれ、そのまま闘技場にたどり着いたのです。
それに驚いたのは、クシポスです。
まさか、ヒアシンスの球根を日没前に持ってくるとはおもっても見なかったからです。
クシポスはハイアシンスの行為にすっかり感服すると同時に、自分の行った事の愚かしさを悔いて、自分の行った事をすべて告白しました。
そして、最後に、プルートーンを指差し、共犯者を告発しました。
歯軋りして悔しがったのはプルートーンです。
プルートーンは、やけになり、指先から魔法で雷を出して、ハイアシンスに浴びせました。
ハイアシンスは雷に打たれたかとおもうと、お守りが光り、ハイアシンスの目の前に鏡を作り出します。
その雷は、鏡にあたると、跳ね返りプルートーンを打ち付けました。
「なぜだ・・・」
それがプルートーンの最後の言葉でした。
ハイアシンスは懐にあった宝石を取り出します。
「おお、それは、伝説の鎧にはめ込まれていた魔法の石ではないか。
なるほど、風に乗って闘技場に戻ってきたのも、雷を跳ね返したのもすべてこの石のおかげか」
医者が感心していますが、ハイアシンスはそれどころではありません。
ハイアシンスにとって、ヘリオスの治療が何よりも先です。
ハイアシンスは、医者にヘリオスの治療をすぐにするように促します。
「おお、そうだった、そうだった」
医者はそう言ってヘリオスの治療に当たろうとしたとき、ヘリオスは、何事もなかったように起き上がりました。
「ありがとう、ハイアシンス。
お前の決意の強さが、そのお守りに力をあたえて、俺の怪我を治してくれた。
これまで、お前とはすべて引き分けだったが、その決意の強さにはとてもかなわない」
「いいや、ヘリオス。
本当に勝負に勝つと言う事は、負けを認めると言うことだと言う事が今見にしみて分かった。
だから、お前の勝ちだ」
ハイアシンスがそういうとヘリオスは、ハイアシンス手を差し伸べます。
「すると、一勝一敗というわけだな。
せっかく勝負がついたとおもったら、どちらも勝ち越しはなしというわけか」
ハイアシンスがヘリオスの差し出すてを堅く握り、二人の絆を確かめ合いました。
それ以来、ヒアシンスの花言葉は、友情になました。
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※この作品は、白い時計塔のある村の
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