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サンフィッシュサブマリン(呟き尾形の創作小説)

呟き尾形の創作童話・小説

 呟き尾形の創作童話・小説は、私、呟き尾形が創作した童話や小説を掲載するコンテンツです。
 既存の童話や小説や新たにかいたものも気まぐれにアップしていく予定です。

 今回は、サンフィッシュサブマリンという短編小説を書きました。
 これは、サトルさんの書いたイラストから、私が短編小説をかいてみるという、一種のコラボレーション作品を作るという企画に結果的になりました(ですので、事前に小説のカットとして利用するこを承諾いただけたのですが、サトルさんがやっぱり削除するように依頼がありました。
 残念です)


 これを読んで楽しんでいただければ幸いですし、感想をいただければなお幸いです(笑)

 

 

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サンフィッシュサブマリン

 ボクは今、闇に包まれた世界にいるような錯覚に陥っていた。
 けれども、そんなボクを貝のように海底に張り付く海底都市の光が照らしてくれている。
 照らされた部分をみれば、ボクは暗闇の中にいるのではなく、ネイビーブルーの海水がボクの潜水艇サンフィッシュの、「FLIPPER」号を包み込んでいるのがよくわかる。
 潜水艇サンフィッシュは、もともとは、海底探査用の潜水艇だけど、今日はのボクの仕事は、「FLIPPER」号の下にいる、キャンサーを誘導することだ。
 キャンサーは、海底の作業をする、有人海底作業用ロボットだ。

 不意に、ボクの上から光が照らされた。
 ホエールサブマリーン。
 その名の通り、鯨の形をした潜水艦である。
 多分、これから海面にでて、ファームシップから収穫物を取りに行くのだろう。
 ファームシップとは、大きな船舶に農業プラントを建設し、海底都市の食料を供給する船である。
 海底都市が出来る前の文明なら、空母やタンカーのような船だと見間違えるだろう。
 まさに、海に浮かぶ農場といったようなもので、海底に届かない日光を十分に浴びた野菜や果物が取れる仕組みになっている。
 また、植物だけに限らず、家畜用のファームシップもあった。
 家畜の食料は雑穀をもって補い、それら雑穀類はファームシップで生産したり、雑穀生産用のファームシップからえていた。
 船である以上、嵐の心配はあるが、ファームシップを大きく取り囲むように浮かぶ太陽電池を電源とした地上観測飛行船によって、気象情報がほぼ把握出来るため、嵐を避けるような経路を運行をして、リスクは激減した。

 そもそも、海底都市などというものが出来たのは、もう、地球上に陸地が少なくなったからである。
 地球温暖化の影響により、北極の氷が解け、20世紀末に警告されていたことが現実になった。
 それは急激な水没ではなく、じわり、じわり、ゆっくりと、それでいて確実に、何かをカウントダウンするかのように陸地は水没していった。
 それに加え、地殻変動も活発になった。
 つまり、陸地が、人間にとって住みやすい場所ではなくなったということを意味していた。
 そこで、人類は、ある大きな選択をした。
 それは、生活圏を陸地ではなく、海底に求めるということだった。
 一見荒唐無稽に思える計画が実施されるほど、人類は追い詰められていたのだ。

 海底移民計画という壮大なプロジェクトは、水圧と暗闇との闘いともいえた。
 水圧対策としては、透明な特殊な合成樹脂が開発された。
 この合成樹脂は、目に見えない小さな穴があり、水を吸いこむことで、水圧の差をなくすことで、海底都市の空間は確保することができた。
 さらに、海底という新しいフロンティアは、人類に多くの海底鉱山資源をもたらした。
 地球上にある、貴重な鉱物の多くは、宇宙から隕石が落ちたときに発生する爆発的なエネルギーによって生成されるという仮説がある。
 実際、鉱脈や油田は、ある点を中心に円を描くように発掘されている。
 人類が資源の枯渇を危惧したのは、陸地だけの資源を掘っていたからである。
 地球の表面の殆どは海である。
 であれば、隕石が落ちる場所が海の方が、確率として高くなるのは、至極当然なことだといえる。
 実際、仮説に基づいて海底鉱山を発掘することができていた。 

 海底の暗闇については、海流を利用した海流発電によって補うことができた。
 海流とは、広い海を一定方向に常に流れるため、その海流の流れをエネルギー源として、発電モーターをつけた。
 常に一定の力がはたらく海流は、気候に影響されることのない、半永久的な発電を可能にしたのだ。

 そして、ボクの「FLIPPER」号とキャンサーたちは、海流発電所へある仕事をしにいくのだ。
 ボクの「FLIPPER」号とキャンサーたちは、目標物をやっと見つけた。
 目標物は、ょうど巨大なジャングルジムのように骨組みだけの建造物である。
 そう、ここは、海流発電所であり、ジャングルジムのような骨組みこそ、海流発電機であった。
 骨組みが生み出す空間のところどころに、何枚かを板の斜め横に倒した形で、奥行きのある細長い合成樹脂のプロペラがしくまれていた。
 板を横に倒し、それを海流に対して斜め方向に向ければ、少しだけ板に海流の力が加わり、すべての板がそれを回転の力に替え、このプロペラがまわることで発電タービンが回り、発電するわけだ。

 海流発電機がジャングルジムのようになっているのは、流れの強い海流の抵抗を少なくするためであり、板を横にして奥行きのあるプロペラにしたのも同様の理由である。
 そして、他にも理由があった。
 ここは、広い海だけれども、海流の流れに合わせて泳ぐ魚がいる。
 海流発電機にぶつかったり、ひっかかったりする魚もいる。
 もちろん、海流発電のタービンは、海底都市を包む合成樹脂でコーティングして弾力をつけたものだから、ぶつかった魚がいても、それほどの傷にはならない。
 とはいいつつも、鯨のように大きな生物はさすがにそうはいかない。
 本当は、無人探査潜水艇ドルフィンが、鯨が仲間の鯨に警戒するときに発する音波をだすことで、大抵の鯨はその場から逃げていくのだが、たまに好奇心旺盛な鯨が発電機にぶつかるのだ。
 こうした仕事も、ボクらの仕事。
 鯨の傷の手当をして、キャンサーが引っかかっている部分を取り除き、鯨を逃がす。
「ごめんよ。
 ボクら、人類がきみたちの居場所にこんなものをたてたばっかりに。
 でも、わかってくれ」
 ボクはいつもそういって、助けた鯨と別れを告げる。
 とはいいつつも、鯨が衝突した部分の骨組みはグンニャリ曲がり、プロペラも丸ごと入れ替えるような状態だ。
「やれやれ・・・」
 ボクは、ため息をついたが、ボクは、ボクの仕事をするしかないのだ。
「さてと、修理するか!」
 ボクは腕まくりをして、操縦かんを握った。


END
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