空の向こう側-1頁
ある晴れた空の下、その大きな空を見上げている子供がいました。
「大きいなぁ、この空の向こうには何があるのだろう?」
その子供、さとる君は、空を眺めては、いつもいつもそう呟いていました。
ある晴れた空の下、その大きな空を見上げている子供がいました。
「大きいなぁ、この空の向こうには何があるのだろう?」
その子供、さとる君は、空を眺めては、いつもいつもそう呟いていました。
さとる君の呟きを聞きとめた、緑蛙はいいました。
「空の向こうには、大きな大きな雲があるんだ。
雲がなければ、雨は降らないからね」
さとる君は思いました。
本当に空の向こうには、大きな大きな雲があるのかなぁ?
さとる君の呟きを聞きとめた、老猫はいいました。
「空の一番向こうにあるのは、お日様だよ。
ぽかぽかと暖かくて、とても気持ちがいい」
さとる君は思いました。
本当に空の一番向こうには、お日様しかないのかなぁ?
「自分の目で確かめてみれば?」
さとる君は、びっくりしてその声の主を探すと、ドブネズミがいつの間にか横に座っていました。
「え、き、きみ、ドブネズミ? いま、なにをいったの?」
さとる君はドキドキしながら、ドブネズミに聞きました。
さとる君の様子に、ドブネズミはがっかりしたように立ち上がりました。
「なんだ、そんな気持ちは無いのかい? それじゃ、もう行くね」
「あ、まってよ」
さとる君は、あわててドブネズミを引き止めます。
ドブネズミはゆっくり振り返って、さとる君にいいました。
「考えたいだけなら、私は邪魔しない。
でも、自分の目で確かめる気持ちがあるのなら、手を貸すよ。」
さとる君は、ドブネズミの言葉に戸惑いました。
でも、ちょっと考えると『自分の目で確かめる』ということに、とてもワクワクしてきました。
さとる君は顔をぱっと明るくして、そして満面の笑みを浮かべながら、ドブネズミの両手を握っていいました。
「うん、行くよ。つれてって」
さとる君の言葉に、ドブネズミは少し眉をひそめていいました。
「つれていく?
私は、私の行きたいところにしか行かないよ。
君がそれで良ければ、ついておいで」
一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
まぶしい光を感じると、そこは、たくさんの木や草が覆い茂っている森でした。
「え、ここは、どこ?」
いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは折りたたんだ大きな紙を広げました。
絵や文字が書いてある大きな紙を見て、さとる君はたずねました。
「それは、何?」
ドブネズミは答えました。
「これは地図。
今、さとる君が立っている場所は、オレノ国だね。
そして、私が立っている所は、ワタクシノ国だ」
さとる君は、びっくりしてドブネズミに聞きました。
「どうしてわかるの?」
「この地図にそうかいてあるから」
ドブネズミの言葉を聞いて、さとる君は周りや足元を見回しますが、自分では目印を見つけられませんでした。
ドブネズミは一本の大きな木を指差して、さとる君にたずねます。
「この木は、オレノ国とワタクシノ国の、境界線の上に立っている
けれど、この木はオレノ国、ワタクシノ国、どちらのものなのだろうね?」
さとる君はドブネズミの言っている事がわからず、答えられませんでした。
一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
まぶしい光を感じると、そこは、大きな川が流れていました。
「え、ここは、どこ?」
いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは地図を広げました。
「この川は、あの建物のところまでは、ナートゥラ川と言って、
そこから海までは、ラティオー川っていうんだ」
ドブネズミは向こう岸に見える建物を指差した後、下流に流れる川を指差しながら、さとる君に
教えてくれました。
でも、さとる君には、どう見ても一つの大きな川にしか見えませんでした。
「同じ川なのに、なんで名前が違うの?」
ドブネズミはさとる君の質問には答えず、肩をすくめていいました。
「違う名前を持つ川が、同じ川なのかどうかを見に来たんだ」
一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
まぶしい光を感じると、そこは、海の上の船でした。
「え、ここは、どこ?」
いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは地図を広げました。
「もうすぐ、ミナノ国の海を出るところだね。
あぁ、水平線が見える」
さとる君がドブネズミが指差す方向を見ると、海と空の間に線があるように
そこには、空と海以外なにも見えませんでした。
海がキラキラと輝いて、空はどこまでも青い色をしていました。
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