空の向こう側-1頁

sora2


  ある晴れた空の下、その大きな空を見上げている子供がいました。

  「大きいなぁ、この空の向こうには何があるのだろう?」

  その子供、さとる君は、空を眺めては、いつもいつもそう呟いていました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-2頁

inu3


  さとる君の呟きを聞きとめた、野良犬はいいました。

  「空はどこまで行っても空。
   空に、向こうなんて無いよ」

  さとる君は思いました。
  本当に空の向こうには、何もないのかなぁ?
  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-3頁

kaeru02


  さとる君の呟きを聞きとめた、緑蛙はいいました。

  「空の向こうには、大きな大きな雲があるんだ。
   雲がなければ、雨は降らないからね」

  さとる君は思いました。
  本当に空の向こうには、大きな大きな雲があるのかなぁ?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-4頁

neko02


  さとる君の呟きを聞きとめた、老猫はいいました。

  「空の一番向こうにあるのは、お日様だよ。
   ぽかぽかと暖かくて、とても気持ちがいい」

  さとる君は思いました。
  本当に空の一番向こうには、お日様しかないのかなぁ?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-5頁

sora2


  野良犬も、緑蛙も、老猫も、皆行ってしまいました。

  さとる君は一人、空を眺めてぽつりといいました。

  「空の向こうって何があるんだろう」

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-6頁

kusanezumi01


  「自分の目で確かめてみれば?」

  さとる君は、びっくりしてその声の主を探すと、ドブネズミがいつの間にか横に座っていました。
  「え、き、きみ、ドブネズミ? いま、なにをいったの?」
  さとる君はドキドキしながら、ドブネズミに聞きました。

  さとる君の様子に、ドブネズミはがっかりしたように立ち上がりました。
  「なんだ、そんな気持ちは無いのかい? それじゃ、もう行くね」

  「あ、まってよ」
  さとる君は、あわててドブネズミを引き止めます。

  ドブネズミはゆっくり振り返って、さとる君にいいました。
  「考えたいだけなら、私は邪魔しない。
   でも、自分の目で確かめる気持ちがあるのなら、手を貸すよ。」

| | Comments (4) | TrackBack (0)

空の向こう側-7頁


  さとる君は、ドブネズミの言葉に戸惑いました。
  でも、ちょっと考えると『自分の目で確かめる』ということに、とてもワクワクしてきました。

  さとる君は顔をぱっと明るくして、そして満面の笑みを浮かべながら、ドブネズミの両手を握っていいました。
  「うん、行くよ。つれてって」

  さとる君の言葉に、ドブネズミは少し眉をひそめていいました。
  「つれていく?
   私は、私の行きたいところにしか行かないよ。
   君がそれで良ければ、ついておいで」

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-8頁

mori01

  一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
  まぶしい光を感じると、そこは、たくさんの木や草が覆い茂っている森でした。

  「え、ここは、どこ?」
  いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは折りたたんだ大きな紙を広げました。
  絵や文字が書いてある大きな紙を見て、さとる君はたずねました。
  「それは、何?」

  ドブネズミは答えました。
  「これは地図。
   今、さとる君が立っている場所は、オレノ国だね。
   そして、私が立っている所は、ワタクシノ国だ」

  さとる君は、びっくりしてドブネズミに聞きました。
  「どうしてわかるの?」
  「この地図にそうかいてあるから」
  ドブネズミの言葉を聞いて、さとる君は周りや足元を見回しますが、自分では目印を見つけられませんでした。

  ドブネズミは一本の大きな木を指差して、さとる君にたずねます。
  「この木は、オレノ国とワタクシノ国の、境界線の上に立っている
   けれど、この木はオレノ国、ワタクシノ国、どちらのものなのだろうね?」
  さとる君はドブネズミの言っている事がわからず、答えられませんでした。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-9頁

kawa01


  一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
  まぶしい光を感じると、そこは、大きな川が流れていました。

  「え、ここは、どこ?」
  いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは地図を広げました。

  「この川は、あの建物のところまでは、ナートゥラ川と言って、
   そこから海までは、ラティオー川っていうんだ」
  ドブネズミは向こう岸に見える建物を指差した後、下流に流れる川を指差しながら、さとる君に
  教えてくれました。

  でも、さとる君には、どう見ても一つの大きな川にしか見えませんでした。
  「同じ川なのに、なんで名前が違うの?」

  ドブネズミはさとる君の質問には答えず、肩をすくめていいました。
  「違う名前を持つ川が、同じ川なのかどうかを見に来たんだ」

| | Comments (0) | TrackBack (0)

空の向こう側-10頁

suiheisen01


  一人で歩き出したドブネズミの後を、さとる君が慌てて追いかけました。
  まぶしい光を感じると、そこは、海の上の船でした。

  「え、ここは、どこ?」
  いきなり変わってしまった風景に戸惑うさとる君を見て、ドブネズミは地図を広げました。

  「もうすぐ、ミナノ国の海を出るところだね。
   あぁ、水平線が見える」

  さとる君がドブネズミが指差す方向を見ると、海と空の間に線があるように
  そこには、空と海以外なにも見えませんでした。
  海がキラキラと輝いて、空はどこまでも青い色をしていました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)