カテゴリー「呟き尾形的孫子の兵法」の29件の記事

孫子の兵法 29 樹上開花

第二十九計 樹上開花「樹上に花を開す(じゅじょうに、はなをさかす)」

 中国人民解放軍の前身である八路軍の陳コウ兵団は、圧倒的な国民党軍に押され、遊撃戦を展開していたものの、兵を休ませるために主力決戦を避けたかった状態にありました。
 そこで囮部隊を繰り出して、主力の出撃に見せかけることにしました。
 囮部隊を敵の目に付くように南下させては、迂回路を戻らせてまた南下させる事を繰り返しました。
 さらに、野営するときにはかまどをたくさん作り、大部隊の移動に見せかけました。
 また、さらに鎮平という県城を攻撃する事までしたのです。
 敵が惑わされて攻撃を仕掛けてくると、撤退しながら敵をひきつけ、わざともうもうと土煙を上げて行軍し、大量の背嚢を遺棄するなどして、あくまでも主力に見せかけることを徹底したそうです。
 すっかり惑わされた国民党軍は、囮部隊を主力と誤認して数ヶ月も追い回し、八路軍の主力の戦力回復を許し、やがて来た主力決戦で、敗退の憂き目に合うの結果をだしました。

 樹上開花は、木に滅多に花を咲かせない木であっても、不意に花を咲いているかのように見せかけて、驚かせるという意味からきています。
 人は、花の咲かせない木があったとしても、木に花を咲かせてみれば、それを見た人は、木に花が咲くものだと思い込むものです。
 これは、木の花にかぎったことではありません。
 ほかにも、布を切って糊付けすれば、注意深く観察しない者にはわからないものです。
 つまり、案外、人の目をごまかすのは、難しくないということです。
 
 人は、一部分をみて、その一部分の印象で全体を想定します。
 たとえば、 これは、精兵を一部の陣に集中させて、軍全体を勢いがあるように見せかけることで、敵を脅すこともできます。

 戦いの最中には、こちらの兵力が劣勢になる事はしばしば起こります。
 樹上開花は、他軍の力を借りたり、囮部隊を利用して自軍を大兵力に見せ、相手を威圧する戦法です。
 その間に兵力を整えたり、撤退したりします。
 ハッタリをかませて時間稼ぎをするという事です。
 これは、雁が空を飛ぶとき、羽根を広げて威儀を示すようなものです。

 こうした策が有効に用いられるのは、劣勢なときだといえるでしょう。
 喧嘩でもなんでも、取り敢えず強そうに見せることで、敵を威圧することと牽制することの意味強いわけです。
 こうした威圧による牽制は、敵が臆病であれば、恐れをなして戦うことなく撤退ということもあります。

 さて、現代において樹上開花はどのような活用方法があるのでしょう?
 樹上開花は、兵法として戦につかうばかりではありません。
 たとえば、コミュニケーションに使えます。
 咲くはずのない花を、咲かせるような話し相手を、サプライズとして形で驚かせるというのは、良好な人間関係を築く上でとても有効な方法です。
 上述したとおり、人は一部をみて全体を想定します。
 ですから、わざと、全体を予想させない一部を強調することで、 樹上開花の効果があがり、よりサプライズとしての価値を上げることができるわけです。
 このサプライズは、好印象として記憶にのこり、このときの好印象が後日にも引き継がれ、結果としてよりよいコミュニケーションが取れるようになるわけです。

 
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孫子の兵法 28 上屋抽梯

第二十八計 上屋抽梯「屋に上げて梯を抽す(おくにあげて、はしごをはずす)」

 楚漢戦争で劉邦と天下を争った項羽は、代々楚の将軍を務めた家柄の出で、秦に対する造反軍の中核となり秦を滅ぼした人物です。
 項羽が、秦を滅ぼすために秦と戦っていたときの話しです。
 楚の項羽が秦に包囲された同盟軍を救出に向かった時の事です。
 項羽は黄河を渡るや、船を沈め、三日分だけを残して食糧を捨て、兵舎の天幕を焼いたそうです。
 そして3日で秦軍を破る事ができなければ、死ぬしかないと兵士達に宣言をしました。
 兵士達は決死の覚悟で挑み、秦軍を蹴散らしたのです。


 
 上屋抽梯は、文字通り「二階に上げて、梯子をはずす」策略です。つまり、相手や味方を引くに引けない状態に追い込む策です。
上屋抽梯は、敵に使うだけではなく、味方にも使うことがあります。
 敵の場合は、敵に対しては餌を撒いて誘き寄せ、罠にはめる策になります。
 つまり、うまくおびき寄せておいて、後続部隊との連携を断ち切り、死地に突き落とすというものです。
 味方に使う場合は、将兵に、戦いに勝ち残らなければ、生還を期待できない状況に追い込む背水の陣をしいて、決死の覚悟で戦うように仕向けるというものです。

 項羽がとった例については、両者の複合パターンであり、
 敵をおびきよせる。
 敵の士気を下げる。
 味方を決死の覚悟を決めさせるという三段策になります。
 こうして、後退する事が出来なくなった項羽軍は、士気が下がった秦軍に襲い掛かり、敵も味方も息を飲むほどの奮戦を見せ、数では数倍する秦軍を潰走させ、味方救援に成功したのです。
 一石二鳥の策略といえるかもしれませんが、二兎追うものは一兎も得ないという、非常にリスクの高い、思い切った策でもあります。

 さて、戦略的な視点においては、長大な兵站線を維持している状態は大きなリスクが高い手段となります。
 なぜなら、兵站線を遮断されれば補給が不可能となるからです。
 兵站線が遮断された場合、前線にいる部隊は退却を余儀なくされます。
 局地的に言えば、一戦場内で部隊が伸びた状態は分断して各個撃破の絶好の機会ですから、これまた危険極まりないと言えます。
 上屋抽梯の計は、こちらから仕掛けて敵をそう言う状態に置くための計略です。

 このような情況に敵を追い込むには、敵にとっての利益で、敵を誘導する必要があります。
 うまく誘導するには、敵が行動しやすくお膳立てを整えてやらなければ、敵は誘われてにくいかもしれません。
 そこで、梯子を外す前には、まず目立つように梯子を置くことで、相手はまだ梯子を使って屋根から下りられるように示しておかないと、効果的に梯子をはずすタイミングがとれません。


 さて、上屋抽梯は、現代社会において、どのように活用できるでしょうか?
 上屋抽梯は、会議やプレゼンテーションに活用できます。
 会議やプレゼンテーションというと、争いごととは無縁のようですが、会議やプレゼンテーションによって、相手を決断させるという目的があります。
 決断とは、きっぱりと心を決めることです。
 人が決断するには、ある程度追い込まれないとなかなか出来ないものです。
 なぜ、決断するには追い込まれないとしないかというと、さまざまな選択肢があり、迷うからです。
 まさに、ここで、上屋抽梯が使えます。
 これは、選択肢をあえて絞り込むということです。
 選択肢を絞り込むことは、プレゼンテーションにおいて、必ずしも得策ではありません。
 いってしまえば、自分自身を追い込むわけです。
 もちろん、選択肢を絞り込むことで相手も追い込まれます。
 できれば、YESかNoかの二者択一の選択肢でせまる。
 こうすれば、プレゼンテーションする側は余計なことを考えずに全力をつくせます。
 相手も決断を迫られお茶を濁すことはできなくなるわけです。
 もちろん、上屋抽梯は、常套手段ではなく、決着をつけるための策です。
 プレゼンテーションで紹介する内容は、当然、自分の進退をかけるだけの価値あるものであることが前提です。

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孫子の兵法 27 仮痴不癲

第二十七計 仮痴不癲「痴を仮るも癲せず(ちをいつわるも、てんせず)」

 三国志の時代。魏の元老である司馬仲達は、名門、曹爽に疎まれて、司馬仲達は栄転でありながら実権の無い位置に棚上げされてしまいます。
 そこで司馬懿は実権を取り戻すべく策を考えたました。
 司馬仲達は一時病気を理由に朝廷に出てこなくなった。
 曹爽としては、司馬懿の存在が不気味で仕方ありません。司馬仲達の動きを不気味に思った曹爽は、部下を見舞いによこし、様子を探らせたのです。
 司馬仲達はといえば、左右を二人の女中に支えられていないと、ロクに歩けず、衣服はずり落ちたまま。女中には何か飲み物をくれと、「アアア…ウウ…」と話しかけ、粥をすすれば口からぼたぼたとこぼす始末。まるで介護を受けている痴呆老人です。
 これを見た曹爽の部下は、「お大事に」と言って、内心ほくそ笑んみました。
 曹爽の部下は本当にボケたと思い込み、曹爽に報告しまた。
 もちろん、これは、芝居です。
 そして安心し、油断させたところで、司馬仲達はクーデターを起こし、実権を握り返したのでした。
  「仮痴不癲」の計の大成功の例です。


 仮痴不癲は、日本語では「能ある鷹は、爪隠す」という諺に置き換える事もできるでしょう。
 自分の手の内を全て見せず、むしろ馬鹿で無能だと思わせる事ができれば、相手の油断を引き出せます。
 油断は、大きなチャンスを作り出しますので、うまく成功すれば、目覚しい効果が得られます。
 仮痴不癲のポイントは、演技力と情報操作です。
 そのポイントを押さえた上で、知らないふりをして何もしないほうが、知ったかぶりをして軽挙妄動するよりもいいというわけです。

 また、演技力のほかにも重要なことがあります。
 それは、能ある鷹は爪を隠す。
 ということわざにあるとおり、実力のある人物は、いたずらにそれを誇示することはしないということです。
 たとえば、知謀に長けているのなら、知謀の存在を気がつかせることをさせないくらい巧みな知謀を使うことで、知謀で名声を得ないということです。
 勇敢さに長けているのなら、その功績を誇らないことです。
 つまり、機が満ちるまで、愚者のごとくしずかにとどまることが、仮痴不癲重要なポイントの一つでもあります。
 ただし、ここで言う愚者のごとく振舞うというのは、愚者であることを外に触れ回り、強調することではありません。
 実績や功績をあえて誇らず、実績や功績よりも低く評価させるという意味で、相手に過小評価させ、油断をさせるための策略であることをわすれてはなりません。

 さて、仮痴不癲は、現代において、どのような活用方法があるでしょうか。
 すでに、上述しましたが、「能ある鷹は、爪隠す」という諺通りです。
 人は、高く評価されるとうれしくなり、ついつい、自分自身の能力を必要以上に見せびらかせるような言動を取ってしまいます。
 しかし、それでは、見せびらかせるようにする分の労力がある分、100%の能力に集中することはできません。
 また、最初から高い前評判だと、できて当たり前ということで、凄いことができても、評価されませんし、外野がうるさく、実力を発揮する環境づくりの無駄な労力もバカにはなりません。
 しかし、仮痴不癲によって、低い前評判を触れ回ることで、外野が騒ぐことも無く、余計な労力を使わずに、100%の能力で目の前のことを実行できます。

 ただ、勘違いしてはいけないのは「能ある鷹は、爪隠す」というのは、能力を出し惜しみすることではありません。
 常に全力でことにあたりつつ、他者に能力や成果をひけらかす労力を費やさないということです。

 


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孫子の兵法 26 指桑罵槐

第二十六計 指桑罵槐「桑を指して槐を罵る(くわをゆびさして、えんじゅをののしる)」

 春秋時代の斉に、司馬穰苴という将軍がいました。
 司馬穰苴は「武経七書」の一つ「司馬法」を著した人物です。
 斉が燕に攻撃を受けた時、この将軍が陣頭に立ち、軍を召集ました。
 司馬穰苴は、召集して集まった部隊の将軍として、部隊の軍紀を引き締め、部下の心を捉えようか思案していました。
 そこに、軍目付である、荘賈が約束の期限を大幅に遅れてやってきました。
 軍目付けが軍紀を乱すのは言語道断です。
 しかし、荘賈は、言い訳をし、王に助けを求めようとました。
 実は、この荘賈、王のお気に入りの寵臣だったのです。
 ここで、寵臣であることを理由に、無罪放免とすれば、軍紀は乱れ、部下の心は離れてしまいます。
 そこで司馬穰苴が思いついたのが、「指桑罵槐」の計である。
 司馬穰苴は軍法官を呼び寄せ、約束の刻限に遅れた者がどのような罪に相当するのか尋ねました。
 軍法官は、「斬罪に該当する」と言ったのです。
 それを聞くと司馬穰苴は、荘賈を直ちに斬罪に処しました。
 その旨を全軍に布れ、兵士は震え上がり、軍の統制は引き締まったそうです。
 さらに、司馬穰苴は、軍紀を正すだけでなく、将軍であったにもかかわらず、兵と衣食を共にし、同じところで寝、自分の給料を割いて兵に振舞ったため、病兵や傷兵がこぞって出陣を請い、全軍が勇躍して戦いに望む事ができたそうです。


 指桑罵槐は、統率力を維持する為の、策の一つであり、軍事的な策と言うより政治的な策といえるでしょう。
 統率力は、多くの人をまとめて率いる能力であり、リーダーに求められる重要な要素です。
 とはいいつつも、リーダーという強い立場で、力づくで弱いものを従えても、短期的には従えることはできても、長期的には、反発の心が積み重ねられ、従わなくなってしまいます。
 ですから、リーダーが組織のチームワークを維持するのに、信頼や援護が必要になりますが、それだけだと馴れ合ったり、甘えが出たりします。
 こうなると、部下はリーダーの言うことを聞かなくなってしまいます。
 時には厳しく当たる事も重要で、情況に応じて、部下に対してアメとムチによって、部下を制御するのは、リーダーとしての責任です。
 特に、内部や直接指示したり、直接叱れないケースにもちいられるのが、指桑罵槐です
 本当は槐を直接怒鳴りたいのですが、それができない時は桑を指差して、間接的に槐を罵るというのが、指桑罵槐のポイントです。
 つまり、指桑罵槐は、実際に罵られているのは桑ですが、本当に罵りたいのは槐だと言うことです。
 実際、人間と言うものは、自分が、直接的に非難や警告をされると反感を持たれやすいものです。
 それに対して、指桑罵槐によって、別の事例を取って非難叱責を加え、一人を厳しく罰することで、同じ組織に属する当事者達を統率しようと言うものです。

 統率については、多くのリーダーが抱える問題であるといいえるものです。
 組織は、最初から統率の訓練がしっかりされた組織であるとは限りませんし、リーダーとは名ばかりで殆ど実質的な権限が無い場合すらあります。
 こうなると、リーダーがいくら適切な指示や指揮をとっても、組織は動きません。
 手っ取り早い方法としては、メンバーに対して利益を提示して従わせる方法もなくもないのですが、それでは、財力が尽きた瞬間にバラバラの組織になるどころか、組織が実質的な崩壊をしてしまうことすらあるでしょう。

 こうした時、リーダーとなる人はメンバーに対して、うまく厳と仁のバランスを取ってメンバーを動かしているか自問してみるとよくわかることでしょう。

 このとき、組織の中に本人に同意させて怒られ役を作り、時には皆の前で怒るという方法もあります。
 怒られ役は、組織において、ある程度、高い地位であることが条件です。
 位が低い場合は単なるいじめとみなされたり、その人間だけが悪いで終わってしまうからです。
 もちろん、ある程度高い地位の人間に、怒られ訳を同意をさせることは、難しいかもしれません。
 しかし、その怒られ役が、引き締めたい部門のチームリーダー的存在でしたら、その一人だけをしかりつければ効果は抜群なのです。
 どうしても、同意が得られない、ないしそうした同意が得るような話し合いが設けられない環境の場合は、わざと誤解したり、ターゲットになる人物の失敗を厳しくチェックすることで、失敗を責める必要があります。
 指桑罵槐を使用する上で覚悟しなければいけない点が2点あります。
 1つ目は、自分自身が憎まれ役になるということです。
 2つ目は、怒られ役本人、あるいはその親しい存在を敵に回す可能性があるため、その後の立ち回りを覚悟する必要があるということです。

 さて、指桑罵槐は、現代社会において、どのようにかつようできるでしょうか?
 これは、いわゆる管理職がそのまま利用できる策ですが、特に部外者と協力するようなことがあったときに効果的な策です。
 たとえば、町内会などで、責任者になったとき、ルールの違反者について追求し、罰則を与えるなどです。
 ただし、指桑罵槐は、厳罰をもってそれを引き締めますが、さすがに、厳罰まではというときは、ルール違反者が誰であるかを周知するようなペナルティーを設けるだけでも効果的です。
 指桑罵槐のポイントは、リーダーとして適法と公正による決断ができることをメンバーに自覚させることが重要なので、厳罰や軽いペナルティーだけではなく、警告も効果的です。

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孫子の兵法 25 偸梁換柱

第二十五計 偸梁換柱「梁を偸み柱に換う(はりをぬすみ、はしらにかう)」

秦の始皇帝が天下統一するのに最後に残ったのが、斉です。
 始皇帝は、この国に対して、武力ではなく、徹底した工作によって相手の戦力と戦意を弱める作戦に出ました。
 秦の始皇帝は、当時、斉で実権をにぎっていた宰相の后勝を買収し、彼の部下を秦に招き寄せました。
 やってきた部下達に多額の金を渡し、諜報員として養成した始皇帝は、斉の国に送り返し、盛んに秦の強大さを訴えさせ、斉には秦にかなう力はないことを口々に言いふらしたのです。
 その喧伝に、斉の国民は抵抗する意思をなくしました。
 その結果、斉の国内世論は、斉王に戦争中止を訴えることになりました。
 やがて秦軍が斉に到達した時、秦の強大さに脅えた人民は一人として抵抗をしなかったそうです。


 「偸梁換柱」のポイントは、密かに論点を摩り替えて、自分を優勢に持っていくことです。
 梁を偸み柱に換うのたとえのように、梁や柱のような家を支える大事な部分を抜く、或いは自分の都合のいいように取り替えてしまう策です。
 同じ様な形でも、梁と柱は別物ですので、家の構造はガタガタになってしまいます。
 今風にいうと、ひそかに骨抜きにするってことでしょうか。
 つまり、相手の肝心な部分を自分の都合の良いように差し替えて、相手を骨抜きにしてしまい、抵抗する意思を失わせ、攻め滅ぼしやすくしたり、こちらの言いなりに操縦できるようにするというものです。
 偸梁換柱は、敵国はもちろん、同盟国へも利用できます。
 自分の意図通りに相手を制御するために、相手を骨抜きにし、自在に操ります。
 相手の組織に、自国のシンパを送り込み、重要ポストを少しづつ獲得し、やがて相手を乗っ取るのが基本的な方法です。
 できれば最初から、相手の組織内でも上層部を狙うのが効率的です。
 上層部が思い通りに動かせれば、もう自分のものも同然、いつ乗り込んで行っても反撃する気力も残っていません。
 現代でも使われる、嫌らしい手ではありますが、ある意味(戦争が起こらないという意味での)平和的な手段でもあります。

 実戦においては、軍隊の陣には縦と横があります。
 陣は、前後に相対する「天衡」の部分は陣の梁、中央を左右に貫く「地軸」の部分は陣の支柱です。
 梁と柱は精兵で構成するのが常套手段です。
 なぜなら、陣を崩さず戦をするには、その支えとなる部分が丈夫でなければいけないからです。
 つまり、陣を見れば、精兵の場所がわかります。
 これは、同盟軍も同じことであり、同盟軍と共同して共通の敵と戦うときであっても、同盟軍に、偸梁換柱につかうことも必要になります。
 同盟軍は今は味方であっても、それは、共通の敵がいるからこそであり、現在の共通の敵がいなくなれば、将来の敵になりうるからです。
 ですから、しきりに同盟軍の陣を変えさせ、可能であれば、ひそかにその精兵を引き抜くなどして、梁や柱の部分そのものに自軍の部隊を入れてしいます。
 そうすれば、当然、陣が崩れていき、ついにその同盟軍の兵を併合することができます。
 同盟の中の敵を併呑して他の敵を撃つという主要な作戦でもあるわけです。

 さて、偸梁換柱は、現代社会において、どのようにかつようできるでしょうか?

 それは世界平和への戦略ともいえる、昨日の敵は今日の友という戦略です。
 社会にといて、利害関係が発生するのは必然です。
 しかし、だからといって、永遠に対立する必要も争う必要もありません。
 そこで、利害関係を冷静に分析し、お互いの利益を明確にます。
 つまり、利害関係で対立したとき、自分および相手が両方得をする方法を考えます。
 これは、利益という、梁を別々のものでお互いが満足するようにするわけです。
 お互いが満足するということは、お互いが妥協できるもの、妥協できないものを的確に判断し、妥協できるものでトレードをするわけです。
 一般に譲歩というのは、敗北を意味しますが、偸梁換柱において、譲歩を武器とするわけです。
 ここでしっかり自覚しておかなければいけないのは、相手の利益と自分の利益の相対化をしないことです。
 つまり、相手の利益が自分の損益であるという考えは捨て去ることです。
 あくまで、自分にとっての絶対的な利益と損益という視点で考えるべきです。
 もちろん、相手はまったく譲歩しないケースもあるでしょう。
 そんなときは、見かけ相手が得をしたように見せかけ、本来の意味の、偸梁換柱を使えばいいだけです。
 相手は、譲歩されたことに気を緩めるわけですから、その隙に、密かに論点を摩り替えて、自分を優勢に持っていけばいいわけです。

 

★★★
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孫子の兵法 24 仮道伐鯱

第二十四計 仮道伐鯱「道を仮りて鯱を伐つ(みちをかりて、かくをうつ)」


※「かく」の字は「鯱」ではないのですが、便宜上、似たような字を替わりにつかいました

 晋の国の横に、虞と鯱という小国があったそうです。
 晋の献公は虞の道を借りて鯱を討つことになりましたが、虞とてただでは道を貸してはくれません。
 配下の荀息は、「先君から伝えられている垂棘の璧と、屈という駿馬を贈物として送り道を貸してもらうことです」と進言しました。
 献公はかけがえのない国宝ともいえる宝を手放すことを渋ったものの、荀息に説得されてその通りにすることにしたのです。
 虞の臣下である宮之奇は、鯱は小国虞の支えであり、鯱が滅べば虞もやがて攻められると諌めたのですが、宝石に目が眩んだ虞公は聞き入れませんでした。
 数年後、鯱が滅んで支援する国が無くなった虞は、晋に攻め滅ぼされてしまったのです。

 仮道伐鯱は、他に行くように見せかけて、目的の国を撃つという、小国の窮地を利用して併呑する策略です。
 ただし、併呑するには、それなりの大義名分が必要になります。
 なぜなら、大国に挟まれている小国が敵の脅威に、怯えているなら救援として出かけて、支援する言うだけでは、信じてもらえないからです。
 なにごとも、行動に出なければ、いくら言葉を発しても信じてもらえません。
 ですから、大義名分は、小国にとって何らかの利益があったり、近隣の小国が、他国の侵略を受けて救援を求めてきたような時などです。
 そうした時は、まさに仮道伐鯱が適用できます。
 そして、これを助ける動きを見せて兵を起し、影響力を拡大しつつ機をみて併呑するのです。
 このとき、如何に、大義名分の根拠となる正義を掲げるか?
 大義名分は、巧みな言葉で、相手と世間をたぶらかそうと思ってもできません。
 大義名分に説得力を帯びさせるのは、言動の一致が必要不可欠だからです。
 如何に、世論の非難をかわすかが、仮道伐鯱の要であり、相手と世間が納得するだけのコスト(あるいはリスク)そして、正しさが必要だとだといえるでしょう。

 もっともセオリーなのは、敵と自軍の間に小勢力がいる場合、敵がそこに手を出したり、武力によって脅しをかけてきたら、すかさずこちらも協力する、あるいは、国を害さないからなどと申し出て、救援を大義名分にしたのち、小国を併呑するというものです。

 古今東西、国家が行動を起こす場合には大義名分が必要です。
 なぜなら、国家というものは、国内の国民のより多くの同意がなければ、国家としての行動は、うまく行かないことがあります。
 また、大義名分が説得力を帯びない場合、逆に、仮道伐鯱を使われてしまうという、付け入る隙を見せてしまうことになります。
 仮道伐鯱のポイントは、得た大義名分は絶対に逃さず、コストを惜しまず行動し、利用するということです。


 逆に小国は、大国に呑み込まれないよう、武力よりも大義名分を相手の国にあたえないような、外交力を磨かなければなりません。 


 さて、現代において、仮道伐鯱は、どのような活用ができるでしょうか?


 それは、偽善であっても「情け」をもった、日常を送るということです。
 情けは人のためならずという故事があります。
 意味は、情けを人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来るということです。

 とりあえず、最初は、心からの情けでなくても、情けは人のためならずと思い、情けをもった日常を送ることです。
 本心からの情けでないということは、偽善であるかもしれませんが、偽善も繰り返し行い、情けをかけるという大義名分を逃さず、コストを惜しまず行動すれば、めぐりめぐって、信頼を得て、いざというとき、周りの人に頼みごとし、協力を得やすくなります。
 情けをかけ続けることで、仮道伐鯱が小国を併呑するかのように、いつの間にか協力者が増えるわけです。
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孫子の兵法 23 遠交近攻

第二十三計 遠交近攻「遠く交わり近く攻む(とおくまじわり、ちかくせむ)」

 秦の昭王(後の秦の始皇帝)は、遠方にある斉を攻撃しようとしましたが、魏の出身で秦の相国となった家臣の范雎が諌めたそうです。
 范雎は、「かつて斉が遠方の楚を攻め、打ち勝って領土を広げましたが、結局失いました。
 何故なら、その間に隣の韓、魏が力をつけたからです。盗賊に刀を貸すような策はいけません」と進言しました。
 昭王は、范雎の進言を受入れ、斉や楚との関係を保ちながらも、隣国の韓を攻め滅ぼし、更に魏、楚、燕を併呑して、「唇亡びて歯寒し」となった最後に斉を攻め、天下統一をし、秦の始皇帝となったのでした。


 遠交近攻は、読んで字のごとく、遠方の国と同盟して近隣の国を攻めることを言い、遠くの国とは同盟を結び、近くのものを攻めるという、外交政策です。
 なぜなら、近くの国は過去の因縁や直接的な利害関係があり、仲が悪い事が多いものです。
 特に、乱世において多くの国が乱立している場合、どこと同盟しどこを攻めるかは国の存亡に関わる問題です。
 なぜなら、乱世の局面では、合従したり連衡したり、手段を選んで臨機応変に対処する中で、各々が利益を取ろうとします。
 仮に、敵が遠近両方にいて遠隔地を先に攻める場合、仮に近くの敵と同盟していたとすると、近くの国と同盟することは、遠くのものを攻めることを意味します。
 遠隔地への遠征には多くの日を費やしますから、それだけ多くの費用が掛かりますし、兵站線が長いと言うのはそれだけで弱点になります。
 そんな弱点を抱えつつ、遠隔地の敵と戦っている最中に、漁夫の利を得ようと、同盟を破棄しないとも限りません。
 近くの国が同盟を破棄などし、裏切られたときに損傷が大きくなるわけです。
 厳しい現実かもしれませんが、後顧の憂いというものです。

 ですから、遠くのものと同盟し、遠くは攻めるべきでなく、利益によって共同すべきだといえるでしょう。
 また、遠方と同盟することは、ニ方向から圧力をかけ、近くを攻めることは、遠くを攻めるより、ずっと少ない労力でじわじわと勢力圏を拡大することが出来ます。
 特に、膠着状態となったなら、まずは、身近な足元を固めなければいけないという事です。
 現代でもこの戦略は使用されています。
 ソ連が崩壊する前の話になりますが、ソ連はベトナムと手を結び、中国に対抗していました。
 中国は中国でカンボジアやアメリカと接近しこれに対抗していました。
 またキューバもアメリカの重圧に耐えるためソ連と結ぶという状況でした。
 国境を接する国々は歴史的な因縁や対抗意識がじゃまして、なかなか友好的にはなれない事がおおいものです。
 だからこそ、「遠交近攻」が現代でも有効であるといえるのかもしれません。

 さて、現代の国際社会の外交でも有効な「遠交近攻」ですが、私たちの日常においてはどんな活用方法があるでしょう?
 それは、ずばり職場の人間関係です。
 まさか。
 と思われるかもしれません。
 もちろん、これは、何らかの形で職場で対立する人間関係があったときでの対立関係にあるときです。
 同じ職場で対立関係が生じたときは、無理して対立関係の人と仲良くせず、対立関係とは離れた人と仲良くするということです。

 実は、これは、恋愛でも応用がききます。
 恋人が近くにいるときは、言いたい事を言ったり、積極的な言動をとり、相手の反応を見ながら臨機応変に対処します。
 恋人が遠くにいるときは、唯ひたすら友好的に対処します。
 もっとも、恋愛は感情で行うものですから、理性的に応用可能だとは判断できますが、言うは易し行うが難しですから、心がけ程度ということなんでしょうか。

 
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 を更新しました。
 次に、エッセイ呟き尾形的孫子の兵法第7回 無中生有を更新しました。


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孫子の兵法 22 関門捉賊

二十二計 関門捉賊「門を関ざして賊を捉う(もんをとざして、ぞくをとらう)」

 中国の戦国時代の有名で最大の戦いの一つに「長平の戦い」があります。
 紀元前260年、秦軍50万と趙軍45万が激突したました。
 秦の猛将白起率いる50万と、趙の趙括率いる45万が長平で戦った。白起の用いた策は、敗走すると見せかけて誘い込み、敵の補給路を遮断し、弱ったところを大将を狙い撃ちにして討ち取ったのです。
 この秦軍の計略により趙軍の総大将は討死に、趙軍は降伏したのです。
 残る40万の軍をどう処置すべきか、白起は決断を迫られました。
 降伏を許して、元敵軍の兵を部隊に編入すれば、次回趙を攻略する時に寝返る恐れが出てきます。
 だからといって、解放すれば国に戻って一致団結し、再び戦わなければならなくなります。
 このことを考えて白起は「将来に禍根を残さないため」に、策を弄して残る趙軍を包囲し、謀を用いてことごとく生き埋めにしてしまったのです。
 40万の趙軍の内、許されて帰国したのは、まだ幼少の二百四十人だけでした。
 そして、40万の大軍を失った趙は、国力は急激に弱体化して行き、三十年後に秦に滅ぼされたのでした。


 関門捉賊は、味方に比べて弱小な敵は包囲殲滅すべし、という敵を包囲し攻め立てて一網打尽にする計略です。
 敵を包囲し、一網打尽にするのは、逃げるのを恐れるからではなく、逃した敵が他人に利用されるのを恐れるからである。
 ですから、この計略を実行するにあたって、条件が2つ必要です。
 一つは、敵が弱小で、戦意が低い事です。
 二つ目は、これを逃したら、将来禍根に残る事です。
 この二つの条件が整わなければ、関門捉賊は、敵を、窮鼠に追い込み、窮鼠猫を噛むが如く、激しい反撃により、逆効果になります。
 特に、二つ目の「これを逃したら、将来禍根に残る事」という条件は重要です。もし、二つ目の条件がなく、一つ目だけの条件であれば、むしろ弱い者いじめの悪名が、その後、不利になってしまいます。
 では、なぜ、「これを逃したら、将来禍根に残る事」が重要なのでしょう?
 これは、 来禍根に残るような者、つまり、敵対を宿命付けられている存在であれば、今は自分の方が強くても、臥薪嘗胆で、将来、敵の方が強くなる可能性はあるわけです。
 関門捉賊は、そう言う将来に禍根を残すような場合は退路を断って殲滅すべきであるという、もっと大局を見て判断する兵法だといえます。
 歴史の中では情けが仇となった例は、数多くありますし何よりも、臥薪嘗胆という、敵を討とうとして苦労し、努力するという意味の慣用句があるほどです。

 さて、包囲した敵を殲滅するのか、或いは、第十六計の「欲擒姑縦」を用いるのかは、そのときのリーダーの状況判断だといえるでしょう。
 判断の基準としては、「欲擒姑縦」が相手の自適変化や心服を促すのに対し、「関門捉賊」は相手を逃して回復の時を与えてはならないときに用います。

 さて、現代においては、関門捉賊は、どのような活用方法があるでしょうか?
 意外にも、教育です。
 教育の中でも、しつけ、叱り方がまさにそれにあたります。
 
 関門捉賊は、策略というよりも、一つの覚悟を意味します。
 人間というものは、口で言うだけではわからないことがあります。
 なぜなら、やってはならぬと口で言うだけで解るなら、やってはならないことだと既に知っているはずだからです。
 しかし、教育を受ける人は、知っている事は少ないわけですから、やってはならぬといっただけで、守る事は難しいのが現実です。
 やってはならぬと口で何度言おうとも守れないのであれば、それこそ、すべての言い訳や慈悲を捨ててでも、教え込むしかありません。
 もちろん、教育は戦争ではありませんから、口で言って禁止したことへの罰則としての関門捉賊であることを忘れてはいけません。
 罰則を課すのは、人へではなく、罪を犯した心を殺す為のものです。
 罰則は、罪に応じて考えるべきでしょう。
 できることなら、自分の犯した罪の被害者の立場がわかるようなことの方がいいでしょう。
 被害者としての立場に立つという意味で、その人の自己の正当化という言い訳の門は閉じられるからです。

 ただし、罰則を受けた人は、罰則を科した人を恨みます。
 さらに、事情の知らない人は、罰を科した人を悪者として扱うでしょう。
 だれも、恨まれたり、悪者になってうれしい人などいません。
 やってはならぬ事をこれからしないためにも、うらまれても罰則を科すという覚悟が、関門捉賊には必要ですし、それだけに、関門捉賊を使う場合は、関門捉賊を使う条件がそろっているかきちんと吟味する必要があります。

★★★
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 まずは、呟き尾形の色の心理学、第69回、民族と色 宗教と赤を更新しました。
 次に、小説鬼神戦記 侍神具チューリップの涙03を更新しました。

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孫子の兵法 21 金蝉脱殻

第二十一計 金蝉脱殻「金蝉、殻を脱ぐ(きんせん、からをぬぐ)」

 漢の高祖劉邦が項羽と天下を争っていたころ、彼は常に苦境の連続だったそうです。
 劉邦が包囲された時のこと、項羽の軍に固められて食料も尽きかけていました。
 この絶体絶命の時に紀信という将軍が献策したそうです。
 それは、婦女二千人に鎧兜を着させ東門から出すというものです。
 すると項羽軍は攻撃と勘違いして東門に兵力を集中しました。
 紀信は劉邦の格好をし、劉邦の御座車に乗って敵に降伏を申し入れたそうです。
 当然、敵の将兵は、劉邦が降伏したものと勘違いをし、万歳の声が原野にこだましました。
 劉邦はその隙に正門から脱出し、難を脱したそうです
 その後、紀信は項羽に捕らえられて処刑されました。
 この計略は一人の有能な将軍の死という犠牲の上に成り立っています。


 「金蝉脱殻」とは、とどまっているように見せかけて、移動するという計略で、主に、撤退の時の計略だといえるでしょう。
 戦争で何が難しいといえば、撤退が一番難しいといいます。
 例えば、戦況が不利になり、敵と対峙しているときなど、一度撤退して状況を巻き返す必要が生ます。
 そのとき、策もなく撤退すれば、追撃を受けて壊滅の危機に瀕する可能性が高くなります。
 そこで、撤退する時に攻撃されたら不利ならば、撤退した事に気付かれなければいいわけです。
 撤退した事に気付かれ無いためには、敵にはあくまでも現在地にとどまっているように見せかけて釘付けにしておき、作戦を無事に完了することが出来ます。
 そして、敵が気付いた時には、味方の陣はもぬけの殻ということになります。
 もちろん、金蝉脱殻は、計がばれた時は、かなりの損害を覚悟しなくてはなりません。
 ですから、いかに、現在地にいるように見せかけつつ、もぬけのからにして脱出するかが、金蝉脱殻の重要なポイントとなります。
 たとえば、退却するときめても、陣形を保って、固く守ると見せ掛ければ敵も迂闊には手を出せるものではありません。
 ですから、敵も様子をみる形になります。
 その隙に、退却するという、軍の統率力と移動の迅速な行動が必要とされます。

 もちろん、金蝉脱殻は、退却の計ではありますが、いたずらに逃げるものではなく、分身の法だといえます。
 目の前にいるように見せかけて、他の方角から攻撃すれば、目の前に敵がいると思っている敵軍は混乱します。
 分身するためには、いかにもそこにいるように見せかけなければいけません。
 ですから、自軍が転進させたあとも、旗やドラはもとの陣に残しておくべきでしょう。

 進むにしろ退くにしろ、味方の動静が敵に察知されなければ、それだけ成功の確率は高まります。
 つまり、金蝉脱殻とは、単なる退却のための策略というわけではなく、敵に対面したとき、精鋭を抜き出して別の陣を襲うものとしての応用も可能なのです。

 これは、『声東撃西の計』や『暗渡陳倉の計』などの陽動作戦とは、方法がまったく逆の策ですが、いずれの目指すところも同じです。
 孫子の兵法において、敵に動きを察知させないことの重要だとしています。


 さて、現代においては、金蝉脱殻は、どのような活用方法があるでしょうか?
 それは、交渉術です。
 勝負事、取引でもかまいません。
 まず、より、交渉において、有利になるためには、とりあえず、相手と対立し、簡単にはことは進まないのだという見せ掛けの主張をします。
 そこから、相手の考えが見えてきます。
 譲歩する条件が用意してあれば譲歩する条件を提示するでしょうし、最初から譲歩する気が無いのであれば、その上で検討が可能です。
 つまり、見せ掛けの態度をみせることによって、最初に相手の手の内を見てから検討することが可能になるわけです。

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孫子の兵法 20 混水摸魚

第二十計 混水摸魚「水を混ぜて魚を摸る(みずをかきまぜて、さかなをさぐる)」

 陽明学の祖、明代の王陽明は軍略家としても知られています。
 この時代、寧王が朝廷に対して反乱を起こしまそた。
 陽明は寧王反乱の鎮圧のための、軍司令官でそたが、突然の反乱に、陽明には、まだ戦える準備ができていませんでした。
 そこで陽明は一計を案じました。
 寧王の腹心である李士実と劉養正宛に「一刻も早く打って出るよう寧王に勧めていただきたい。寧王を本拠地から切り離せば、まさに討ち取ることは用意である」という密書を認め、それを捕らえていた諜報員に持たせて、わざと寧王にわたるようにしたのです。
 寧王は、その密書を読むや、李士実と劉養正が敵と内通しているのではないかと疑ったのです。
 その疑いを持ったまま、本人達に今後の作戦を諮ると、二人とも一刻も早く南京を攻略し帝位に付くように言うばかりです。
 こうして寧王は疑心暗鬼に駆られ、出撃する機会を逸してしまいました。
 十日ほど過ぎたころ、寧王はそれが、軍を整えるための策略だったことを知り、歯噛みするが時遅く、王陽明の軍に討ち取られてしまったのです。


 
 混水摸魚は、水をかき混ぜて、何も見えなくなった魚を捕らえよという、相手の内部混乱に乗じて勝利を収める戦略です。
もちろん、相手が混乱しているとは限りませんが、そこは策略。
 混乱していなければ、まず混乱させる工作をし、その後、その混乱につけこむわけです。

 特に、組織というものは、指揮が乱れると、戦力が落ちてしまいます。
 これは、組織が、巨大であればあるほど、言えることです。
 逆に、敵が統一された意志の元に規律正しく行動している場合、集団としての戦力は高いと言えます。 
 ところが、命令系統が混乱すると、各自の行動はばらばらとなり、統一行動は不可能となって、実際の兵力よりも戦力的には低下します。
 こうなると、敵は軍としての行動ができなくなりますから、味方から見ると戦略的な時間確保、彼我の戦力格差、戦略的な”隙”等の形でメリットとなります。
 このメリットを有効に利用するのが、『混水摸魚』です。
 自然と組織の中に派閥や別の勢力が出来てしまいます。
 その中でも一番弱い部分をつき、撹乱工作を行うことで、混乱させれば、組織は機能しなくなります。
 強固なカリスマ性を持った指導者でもない限り、中々一枚岩のようにはいかないものです。
 さて、混水摸魚のポイントとして次の二点が挙げられます。
 1・相手の判断を惑わすかく乱工作をし、指揮系統を乱す。
 2・相手の派閥などの中で、対立の激しいところをターゲットにする。
 といったものです。

 上記のポイントに着目し、積極的に機会を作って、敵を混乱させ、それに乗じて攻撃するのが、混水摸魚であるということです。

 さて、現代においては、混水摸魚は、どのような活用方法があるでしょうか?
 それは、議論などにおいて少数派になったときに使えます。
 少数派になってしまうと、多数決になれば、それは自分の意見は却下されることは明白です。
 そこで、多数派の和を乱します。
 人間というものの結束は、利害の一致や、総論での意見の一致によるものが殆どです。
 そこで、多数派の各自の意見と利害を分析し、多数派の意見が通ったとしても、利害の少ない存在を強調します。
 すると、利害の一致による結束を崩すという、混水摸魚ができます。
 すると、多数派の中でも多数派と少数派に分かれ、多数決に有利になります。
 次に、総論での意見の一致によるものの場合、総論賛成、各論反対ということはよくあることです。
 総論で自分が少数派になったとき、各論に議論をすり替え、議論することで、結束の和を崩し、混水摸魚を実行することが可能です。

★★★
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 今回は、小説を書こう! 第76回、表現技法 チェックリスト オズボーンのチェックリストを追加しました。

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