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リトルボーイ(呟き尾形の創作小説)

 呟き尾形の創作童話・小説は、私、呟き尾形が創作した童話や小説を掲載するコンテンツです。
 既存の童話や小説や新たにかいたものも気まぐれにアップしていく予定です。

 今回は、8月6日の広島原爆記念日をきっかけに書いた短編小説です。
 広島原爆記念日をきっかけに、調べた内容を、ファンタジー世界という
フィクションの世界で書き起こしてみました。
 タイトルは、「リトルボーイ」です。

--------------
リトルボーイ


 
 僕は、父、アトムによって造られた。
 父、アトムは、王宮魔術師であり、大臣のプルトンととも
に、王国のために日夜魔法の研究をしていた。
 僕の名は、リトルボーイ。
 魔道兵器である。
 魔道兵器なのに、僕に意思があるのは、僕が造られた目的
にあるのだという。
 僕が作られた目的。
 それは、殺戮と破壊。
 僕は殺戮と破壊を目的に造られた魔道兵器。
 僕の最初の実験は大成功だった。
 父、アトムは、僕をどこにでもあるような町に連れて行き、
僕からずっと離れた位置に、兵士たちが隊列を作っていた。
 兵士たちの隊列は、僕から見れば玩具の兵隊のようだった。
「いいぞ、わが息子よ。
 実験を開始だ」
 父、アトムの思念が伝わってきた。
 僕は僕の中にある魔道兵器を発動させた。
 魔道兵器は、呪文の詠唱の代わりに、光を放ちながら臨界
点まで分裂し、そして、破壊の閃光を放つ。
 殺戮と破壊の閃光は、熱線と衝撃波という形で2重に僕の
周りの物質は、元の形を失い、黒焦げになる。
 そして、命あるものの命を奪っていった。
 玩具の兵隊は無事だったようだが、後日、彼らは、謎の病
死をとげた。
 これが、魔道兵器、マナ分裂の威力である。

 マナ。
 すべての物質、すべての命に宿る力。
 魔法使いはこのマナを使って様々な魔法を使う。
 マナの正体については、一切わかっていない。無の異空間
から来たとも、世界そのものであるとも、太陽から送られて
きたものだとも言われている。
 ただ、わかっている事は、マナというものがあるというこ
とだ。
 父、アトムは、このマナ分裂を発見した。
 父、アトムは、マナはすべての物質、すべての命に宿るの
だが、実は、このマナこそが物質と命を形成している事を発
見した。
 つまり、物質をマナに変換することによって、行き所の無
くなったマナは、大きな殺戮と破壊の閃光となって、熱線と
衝撃波を生むのである。
 また、この閃光を浴びた命あるものは、命を形成するマナ
のバランスが崩れやがて死に至るのだという。

 実験は成功である。それも、予想以上の殺戮と破壊を発
揮した。
 僕は優秀な魔道兵器なのだ。
 これで、僕は父、アトムに必要とされる。
 しかし、僕の期待とは裏腹に、父、アトムの反応は僕の期
待を裏切るものだった。
「これほどまでとは・・・」
 父、アトムの思念が伝わってくる。
 違う、それは僕の期待する思念ではない。僕は、父、アト
ムに造られ、父、アトムに必要とされるために存在してい
るのだ。
 そんな思念は送らないでほしいと心から願った。
「わが息子よ、お前の力は、王や大臣の理性をも破壊してし
まう。
 王や大臣は、お前の力を知れば、野心を刺激し、必要以上
の殺戮と破壊を誘発させてしまう。
 とくに、プルトンはお前の力を悪用しようとするだろう。
 お前は存在してはならない魔道兵器になってしまったのだ」
 父、アトムの思念は僕の存在価値を奪った。
 そんな、だったら、僕はどうすればいいのだろう。
 だが、そんな悩みはすぐ解決してくれた。
 王が、僕を必要としてくれたのだ。
 父、アトムは僕の能力を隠蔽し、王に伝えなかった罪で死
刑になることになった。
 僕は、僕の存在価値を奪おうとした父、アトムがそうなる
事は当然のようにおもった。ただ、1通の手紙が届けられた。
 父、アトムの弟子、ウランだ。
 ウランは、父、アトムと同様に、王に僕を使わないように
進言したらしい。
 ウランだけではなく、僕を造った魔法使い全員がそうだと
いう。
 だけど、僕を使うためには、僕を造った魔法使いが必要で
あるという理由かから、ウランたちは死刑を免れたらしい。
「リトルボーイ」ウランの思念だ。ウランは思念を続ける
「いいか、リトルボーイ。
 俺たちは、お前の事を愛している。
 これは、お前の父も同じだ。
 だから、これから伝える言葉は、俺たちの言葉だと思って
もいい。
 リトルボーイ。
 お前の破壊の力は強すぎた。
 お前がひとたび破壊の閃光を放てば、一つの城なんてすべ
てガレキのヤマになり、それ以上の人の命を奪ってしまう。
 マナ分裂が起こると、連鎖反応で必要以上の破壊の力が
発揮されるからだ」
 それは、実験によって僕も知っている。
 でも、殺戮と破壊のために造られたのは僕だ。
 僕は、父、アトムやウラン。
 あなたの目的を果たしたまでだ。なのに、予想以上の成
果になぜよろこんでくれないのだ。
 王はあれほど喜んでいたのに。
「仕方がない。
 では、お前に、わが師、アトムが予知したものを思念か
ら送ろう。
 それが、わが師にして、お前の父、アトムが命を賭けて
止めようとしたことだ」

 それはまさに地獄絵だった。
 撒きのごとく燃え盛るのは、モノではなく、人であった。
 燃えるはずのものは燃える前に灰になり、目に見えぬ僕
が放った閃光は、生き残った人々の体から命を蝕んだ。
 かろうじて生き残った人間は、地獄の亡者のごとく行列
をなし、水を求め、求めた水を飲んだとおもえば、そのまま
命を引き取った。

 アトムの予知はまだ続くが、初めて僕は、魔法使いから
の思念を拒否した。
 こんなの、こんなの僕はいやだ。
「そうだ、だからこそ、お前の父は命をかけたのだ。だ
から逃げよう。
 わが師アトムは、お前に意思を与えた。
 それはなぜかわかるか、リトルボーイ」
 そういえば、なぜだろう。
 僕が単なる魔道兵器なら、僕が僕である必要もない。
 僕はもしかしたら、父、アトムに愛されていたのだろ
うか?
「そうだ。
 そして、俺もまたお前を兄弟のようにおもっている」
【だまれ! 裏切りもの。魔道兵器をそそのかすな】
 怒鳴り声が聞こえたかと思うと、ウランは魔法で貼り
付けにされた。
「お前は、プルトン!」
【プルトン宰相様とよべ、無礼者】
「宰相だと、一回の魔術大臣が宰相だと?」
【ウランよ、まだ気がつかなかったのか?
 アトムなど気がついたから、さっさと死刑になったの
だろうに。
 アトムも鈍感な弟子をもって不幸じゃわい】
 プルトンはカラカラと笑い声を上げた。
「なぜ、わが師はそれを俺に・・・」
【お前ごとき未熟者が知れば、すぐに尻尾がでるとい
うものだ。
 今のようにな。
 ひひ、もうすでに、王はワシの操り人形じゃ。
 さて、リトルボーイよ。
 ヘタに妄想するな。アトムがお前に、意思を与えた
のは、ワシの命令だからじゃ。アトムめの愛などというくだらぬものではない

 意思があれば、状況に応じることができる。
 意思がなければ、敵国に奪われてしまったときに、
悪用される。
 わが軍が、敵国のマナ分裂兵器を奪ったようにな。
 なに、あともう少しで、敵国の首都アータムゴラート
でアトムの予知は実現するさ。
 それは、リトルボーイ、お前によってではなく、敵国
が開発したマナ分裂魔道兵器によってだ。それで、マナ
分裂の技術もなくなり、敵国もいなくなり、他の国々の見せしめになる。
 なまじ、意思を持たせた分面倒になったが、なに、お
前が要るだけでいい。
 今から使う、マナ分裂魔道兵器を使って、わが王国に
はもっと凄い兵器があることを伝えれば、各国はそれに恐れてワシの王国の言
いなりだ。
 なにせ、お前はマナ分裂の能力とともに、瞬間移動す
る能力がある。
 だから、一瞬でお前をどこに行くようにでも命じる事
ができる】
 そうか、これが、父、アトムが心配したことだったの
か!
 僕は、僕の存在価値を奪ったとおもっていた父、アト
ムの言葉を思い出した。
「わが息子よ、お前の力は、王や大臣の理性をも破壊し
てしまう。
 王や大臣は、お前の力を知れば、野心を刺激し、必要
以上の殺戮と破壊を誘発させてしまう。
 とくに、プルトンはお前の力を悪用しようとするだろ
う。
 お前は存在してはならない魔道兵器になってしまった
のだ」
 違う、父、アトムは、僕の意思とは関係なく、僕を悪
用しようとしていた事を心配していたんだ。
 それに、あんな予知、実現させない。
【ふん、それにしても、アトムのやつ、魔道兵器に良心
なんて余計なものを。
 まぁ、いい、魔法牢にお前を入れておけば、お前はも
う瞬間移動できないのだからな。
 今頃、マナ分裂魔道兵器がアータムゴラートを破壊し
ているさ。
 さて、お前の魔力を封印させてもらうぞ】
「リトルボーイ、お前なら、プルトンの野望を打ち砕け
る。
 アータムゴラートに行け!
 お前なら、お前の父の予知を防げる!」
 僕は、ウランの言葉を聞いて、とっさにアータムゴ
ラートへ瞬間移動した。

 目の前に、マナ分裂魔道兵器のあった。
 アータムゴラートの人々はパニックになって、悲痛な
悲鳴を上げていた。
 アータムゴラートの魔法使いは必死に、マナ分裂を
止めようとしている。
 自分の造った魔道兵器を制御しきれないということ
なのだろう。
 とっさに、ここまで着たけれど、僕は一体何が出来
るのだろう?
 そう考えているうちに、魔道兵器が僕の目の前でマ
ナ分裂をし始める。
 マナ分裂は呪文の詠唱の代わりに、光を放ちながら
臨界点まで分裂し、そして、破壊の閃光を放つ。
 マナ分裂。
 マナはすべての物質、すべての命に宿り、マナこそ
が物質と命を形成している。
 マナ分裂は、物質をマナに変換することによって、
行き所の無くなったマナは、大きな殺戮と破壊の閃光
となって、熱線と衝撃波を生む。
 また、この閃光を浴びた命あるものは、命を形成す
るマナのバランスが崩れやがて死に至る。
 マナ分裂・・・。
 起こってしまえば、この街が地獄と化してしまう。
 僕は目の前で、マナ分裂が始まっている魔道兵器
を見た。
 そうだ! 一か八かの賭けだ!
 僕は、僕の中にある魔道兵器を発動させた。
 目の前の魔道兵器は、破壊の閃光を放つ。
 僕の魔道兵器は、目の前の魔道兵器より一瞬遅れて
閃光を放った!!!
 世界は白く、何も無かった。
 僕は賭けに負けたのだろうか。
 しかし、そこには、世界が黒焦げになる地獄は無
かった。
「良くやったぞ、わが息子、リトルボーイよ」
 父、アトム?
 死んだはずでは?
「そうさ、死んださ。
 だからこそ、この無の異空間で、お前とこうして
話せるのさ。
 マナ分裂は、マナを暴走させ、マナのバランスを急
激に崩すことにある。
 だが、マナ分裂にマナ分裂を加えれば、そのバラン
スは元に戻ろうとして、余分なマナは、こうして無の
異空間にマナが送られる。
 つまり、魔道兵器の力が相殺されたということだ」
 父、アトムの思念は、喜びに満ちていた。
 僕は、僕の能力によって、父、アトムを喜ばせるこ
とができたのだ。
 僕は、生まれて初めて、うれしいとおもった。
「それではしばしのわかれだ、リトルボーイよ」

 僕は気がつくと、アータムゴラートの街中に立って
いた。
 アータムゴラートの人々は僕を歓声で迎えてくれた。
 僕は、その歓声をよそに、僕は、僕の意思で、何を
すべきかわかったことに喜びをかんじていた。
 すると、プルトンのような目をしたアータムゴラート
の大臣が僕に美辞麗句の賛美を長々と述べた後に、
手を差し伸べてくる。
 僕は、これから、プルトンやアータムゴラートの大
臣のような野心家の野心を打ち砕くという目的をもっ
たのだ。
 僕の破壊の力は、僕が新たな目的をもつことで、
単なる殺戮の魔道兵器ではなくなる。
 魔道兵器が悪いのではない、魔道兵器を悪用する
人間が悪いのだ。
 そう、僕以外の誰かが、マナ分裂を使おうとした
ら、僕がそれを相殺させればいい。
 僕の存在価値は他人に必要とされるからじゃない。
 僕は、僕の目的を持つことが僕の存在価値なんだ。

 そうして、僕は、大臣の手を払い、アータムゴラート
の人々の目の前を去った。

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8月6日は、広島原爆記念日です。
それをきっかけに、調べた内容を、ファンタジー世界という
フィクションの世界で書き起こしてみました。
ご存知のとおり、リトルボーイは、広島に使われた原爆の
名前です。
アトムは原子、ウランは原爆に使われる原料です。

 原爆は本来存在してはいけない兵器なのかもしれませんが、
原爆が悪いというよりも、原爆を悪用する人間が悪いのだ。
ということを忘れてはなりません。

 

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