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BITTER MEMORY(呟き尾形の創作小説)

呟き尾形の創作童話・小説

 呟き尾形の創作童話・小説は、私、呟き尾形が創作した童話や小説を掲載するコンテンツです。
 既存の童話や小説や新たにかいたものも気まぐれにアップしていく予定です。

 今回は、昔書いた短編恋愛小説を掲載したいと思います。
 恋愛というジャンルのは、なんとも苦手なものですが、もしよろしければ読んでみてください。

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BITTER MEMORY

 夏も終わり、風は秋の色を運ぶ準備をしている。
 昼を知らせるチャイムが学校の保健室にも響き渡る。
 仮病を使った生徒たちは、10分ほど前に、学食へ向かっていた。
 保険室の主をしている近藤麗は長い黒髪をさらりとかきあげ、一人残る作並
乙恵を眺める。
 作並乙恵。
 女性にしては、背が高く、サラブレットのような体の線の美しさを感じさせ
る。健康的な表情と小麦色の肌は夏休みに外で活動したことをうかがわせた。
 光沢のある短い髪は、麗の黒髪とは異質なものだ。
 学校の規則でセーラー服は着ているものの、なんとなく男装させれば、なか
なか絵になるだろうと麗は思った。
「こら、作並、お昼休みだ、担任には黙ってやるから、狸寝入りはやめて、保
健室を私のオアシスにしてくれないか?」
「へへ、ばれてたか」
 乙恵はぺろりと下を出し、やっと開放されれといわんばかりに、ベッドから
跳ね起きる。もともと性格上、じっとしているのが苦痛なのだろう。
「早退はダメ。おまえを早退させたら、他の生徒に申し訳が立たない」
「は~い」
 乙恵は不満げな返事をしてから保健室から出ようとしたとき、男子生徒が
入っていた。村田光悦。背は高く痩せ型。全体として体重不足でひょろ長い感
じが目立つ。なで肩で華奢な感じで、頭の天辺から指にいたるまでほっそりし
ているようだ。
「あ、村田、この前はライブにきてくれてサンキューな。
オレ的にうれしかったぜ」
 無邪気な笑顔に、そっぽを向けるように「ああ」と無愛想に答える村田。
 乙恵は少しだけムッとしたようだが、そのまま笑顔を崩さず、保健室をそよ
風のように走り去っていった。
 村田は、「ふぅ」と止めていた呼吸がやっと出来るとばかりに大きく深呼吸
しつつ、一瞬のうちに後悔と感激の表情を作った。
 麗はその光景を見て村田が乙恵のことを異性として意識しているのだと洞察
する。
「あら。不器用なことね。村田君」
「な、何を言っているんですか。
 あんな男勝りで、自分のことを”オレ”なんていう女・・・」
 村田はそういいかけながら、一度言葉を切った。そして、何かを告白するかの
ように、再び口をひらいた。
「近藤先生・・・でも、先生の言う通りかもしれません。
俺って、けっこう器用っていうか社交的だと思ってたんだけどなぁ・・・」
「そうね。特定の人物のことになると、途端にぞんざいな態度になったり、批
判的になったり、ちょっとした冗談なのにムキになったり、今日みたいに昨日
の夜、誰かさんに前のライブを誉めようと寝ずに考えたくせに、さっきみたい
にいえないところなんか特に不器用ね」
「せ、先生、俺は・・・」図星であることは村田の複雑な表情が語っている。
「いいのよ。先生の勘違いで。
 だから、勘違いだと思って聞いて。
 先生もね。村田君ぐらいの頃は不器用だったわ。先生の時は、その人のこと
になるとムキになって、突っかかったり、言いがかりをつけたり、親友からは
からかわれたわ。
 自分の本音をかくして、見破れない友達、両親、先生たちを見て馬鹿にして
いたつもりだったんだけど、親友とその人だけはだませなかった。
 だから、親友は親友になったし、その人を好きになったんだと思う。
 その人はね、私の知りたいと思ったことは何でも知っていた。
 私がその人のことを知らなかったこと以外はね。
 いえ、知っていたのかもしれないわ。知っているからこそ、なんどか、二人
きりの夜を過ごしても何もしなかったと思うわ。女として魅力が無かったのか
な。
 そんな風に思ったことも無くは無かったけど、その人以外の男性は正反対
の反応だった。
 まぁ、いやらしいことをしてきた男は、空手でのしてきたけどね」
 麗は鋭い正拳を村田に突き出し、目の前で寸止めする。
 麗が空手の達人であることは有名な話で、セクハラ教師や、男子生徒をのし
たのは有名な話である。
「その人はどうして違かったのかなぁ」村田は思わず言葉を挟んだ。
「私が不器用なことを知っていたからよ。もし、その人が私がその人のことを
好きだと知ったとき、ごまかそうと必死になって自暴自棄になることを知って
いたからじゃないかな」
 麗は遠い目で、ほろ苦い思い出に浸るように保健室の外を見る。
「先生は、その人のことがまだ好きなんですね」
「な、なにを・・・そうね。そうかもしれないわ。
 これを認めることってとってもつらいことだけど・・・」
 村田は右手の掌を突き出して、麗の言おうとしていたことをさえぎる。
「分かった。俺も認めてみるよ。
 先生と俺は不器用なところは同じみたいだもの」
「お、少年、察しがいいぞ。それも素直なところがいい。
 その人の次に好きになってしまおうかな」
「冗談。先生みたいな人は怖くて願い下げさ」
「いったな、少年。まぁ、明日になって後悔しなさんな」
「するもんですか。俺は乙恵が・・・」
 今度は、麗が右の手の掌を突き出して、村田の言おうとしたことをさえぎ
る。
「その言葉は、君の愛しの人に最初に言ってあげなさい」
 麗はウィンクすると、村田は無言でうなずき、保健室に来た理由も忘れて保
健室を飛び出した。
「おー、おー、いいねぇ。若人は。
 私の愛しの人は君のお父さんだけど、少年はお父さんに似てきたなぁ。う~
ん、さっきの言葉、全くの嘘じゃなかったんだけどなぁ」
 麗は本気とも冗談とも取れない呟きをもらした後、保健室の窓から見える校
庭を遠い目で、ほろ苦い思い出に浸るように眺めた。
 

 
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