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ヒアシンスの絆 前編(呟き尾形の創作童話)

呟き尾形の創作童話・小説

 呟き尾形の創作童話・小説は、私、呟き尾形が創作した童話や小説を掲載するコンテンツです。
 既存の童話や小説や新たにかいたものも気まぐれにアップしていく予定です。

 花をテーマにした童話です。
 今回は、ヒアシンスをテーマにしました。
 長くなったので、前編、後編とわかれています。

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ヒアシンスの絆 前編

 むかし、むかしあるところに白い時計搭のある村がありました。
 リムネーは、おてんばで歌好きでお喋りな娘です。
 いつも、村の真中にある白い時計搭でいろ
んなお話をしています。

「今日は、ちょっと長い、二人の友情の、物語。
 舞台は、昔々のコロシアム。英雄たちが、技を競い合う闘技場で始まって、
コロシアムで終わる物語」
 ハイアシンスは眉目秀麗、知勇兼備の若者でした。
 ハイアシンスには無二の親友、ヘリオスという、明朗快活な若者がいました。
 二人は、仲も良いのですが、一度何かを競うと、なんでもかんでも引き分け
でした。
 剣の技を競っても、両者の間に差が無く優劣がつけがたい。
 もちろん、素手で戦うパンクラティオンでもどちらも負けを認めません。
 足の速さを、短距離、中距離、長距離どれを競っても、同着。
 馬に戦車を曳かせる馬車競技も引き分け。
 いつも勝敗のつかない二人は、ハイアシンスも、ヘリオスも、いつか決着を
つけたいと思っていました。
 そんな時、西風の神殿の神官が、神殿の庭のヒアシンスの世話をしている
とき、神託をうけました。
 お祈りの時間以外に信託を受ける事はめずらしいのですが、神託の内容
もまた、変わったものでありました。
 神託の内容は、
「西風の神殿に、奉納されていた伝説の鎧をもっとも優秀な英雄に与えよ」
 というのです。
 そこで、西風の神殿の神官は、神託に従うために、英雄を集うことにしまし
た。

 ハイアシンスもヘリオスもこれは良い機会だと思い参加することにします。
 ハイアシンスもヘリオスも優勝候補で、他の参加者を嘆かせました。
 もっとも、嘆いていたのは、クシポスという英雄です。
 クシポスは誰よりも大きな背丈で、 剣の技は、ハイアシンスとヘリオス
の次に巧みです。
 クシポスは、ハイアシンスとヘリオスさえいなければ、みなが認める英雄
としての力量はありました。
パンクラティオンはハイアシンスとヘリオスの次に強いとうわさされていま
す。
 足の速さもハイアシンスとヘリオスの次です。
 唯一勝てるかもしれないのは、馬車競技ですが、これは、馬車に細工した場
合です。
 しかし、二人の英雄と自分を比較して、嘆くことが、クシポスが英雄になる
だけの器量がない証拠だったのかもしれません。


 実際、西風の神殿の大きな旗が風になびくコロシアムの競技の結果を
みれば、うわさの真偽はわかります。
 クシポスは、準決勝戦でハイアシンスに剣の競技で負けてしまいました。
 パンクラティオンでは、ヘリオスに準決勝戦で負けてしまいました。
 競走でも、短距離、中距離、長距離どれも決勝の競走にはのこったもの
の、どれも、ハイアシンスとヘリオスに負けてしまっていまいました。
 どの決勝戦も、競技の最終日にまとめて行われることになっていますが、
どの決勝戦もハイアシンスとヘリオスの対決ばかりです。
 まだ、行われていない競技は馬車競技です。
 クシポスは陰に隠れて、プルートーンという魔法使いに話しかけます。
「もうだめだ。
 せっかく君に、神官に催眠術をかけさせて、誤った神託を受けたように思い
込ませたのに、結果はこの様だ」
 クシポスは、少ないとはいえ、二人に勝てるかもしれないと思っていました
が、競技の結果がそれを認めさせてくれません。
「まったくだ」
 プルートーンは、情け無い奴だ。と言いたげに目を細めます。
 それを聞いたクシポスはセキを切ったようにプルートーンに言い訳をします。
 剣の競技の時に、ああしてれば。
 パンクラティオンのときに、こうしていたら。
 競走のときはコンディションがベストではなかった。
 と言い訳ばかりしています。
「いやいやクシポスよ。まだ、チャンスはある」
 プルートーンはずるがしこい笑みを、クシポスに見せます。
「どんな、チャンスが残されているというんだ。
 馬車競技で馬車に細工をしたら反則負けだぞ」
 クシポスはさじを投げたいと言わんばかりの口調です。
 プルートーンは、だれもいない影で、さらに声を潜めてクシポスの耳に顔
を近づけます。
「馬車がだめなら、馬を驚かせればいい。こっそり、魔法をつかってやるよ。
 馬を驚かせるくらいの簡単な魔法ならばれやしない」
 プルートーンはクシポスにそう耳元でささやきました。
「馬。そうか! 馬なら言葉をしゃべらない。
 それはいい手だ。だが、オレの馬はおどろかないのか?」
「大丈夫だ。ハイアシンスの馬だけ驚くようにしておくよ」
「ハイアシンスだけじゃだめだ。ヘリオスのもだ」
「そうしたら、お前の馬も驚いてしまう。
 大丈夫だ。ハイアシンスが大怪我をすれば、ヘリオスは立ち止まるだろう」
「ヘリオスはダメなのか?」
「その場合、ハイアシンスは立ち止まらないだろう。
 なぜなら、ヘリオスは、勝負よりも友を心配するが、ハイアシンスは勝負に
集中してヘリオスのことには気がつかないだろうから」
 プルートーンは、ずる賢い笑を浮かべます。
「そうか! じゃぁ、さっそく、ハイアシンスの戦車に細工をしよう!」
 クシポスは早速、馬車に細工をしようとその場を立ち去ろうとすると、
プルートーンはそれを止めます。
「まてまて、それだと見かけた人間がお前を疑うだろう。
 それだと、お前まで失格になってしまう。まぁ、まかせておけ。使い魔に
やらせておく」
「それもそうだな」クシポスはうなづきながら、その場を立ち去りました。
 そしてプルートーンは、一人だけになると、悪賢そうな笑みを浮かべて、
使い魔を召還します。
 すると空中に煙がポン! と現れると、煙の中から、コウモリのような
翼を背にもつ、しわだらけで鷲鼻の醜い使い魔が現れます。
「なんでがしょ、ご主人様」
「使い魔よ、ヘリオスの馬車に、この魔法の石をはめて来い。
 この魔法の石は、ある時間になると、爆発する魔法の石だ」
「わがりやした。ご主人様」
 使い魔は、ポンと煙のように消えてしまいました。
「ふふふ、あの伝説の鎧は、ふさわしくないものが着れば、そのものに
いかずちを当てる罰を与えてしまうという。
 当然、クシポスのような愚かで卑怯なでくの坊がふさわしいはずも無い。
 そうなれば、愚民どもは、神の怒りだと恐れおののき、神託をくだした
神殿の神官どもの信頼は失墜、となれば、理由も無く忌み嫌われていた
わしら魔法使いにたよってくるというものだ。
 そのあと、伝説の鎧にはめられている、魔法の石を使い魔に盗ませれば
わしの魔法の力も強くなるというもの。
 わーはっはっはっは」
 プルートーンは、高笑いを上げました。

 一方、使い魔は、肝心などの馬車に魔法の石をつければいいかわからく
なってしまいました。
「ま、どれでもいいんでがしょ」
 使い魔は、適当に馬車を選び、それに魔法の石をつけたのです。
 その馬車には、ヘリオスという名前が書かれており、その隣に、ハイア
シンスの馬車がありました。

 そして、夜が開け、馬車競技がはじまります。
 いななく馬を押さえつけ、競技者は横に並びます。
 いっせいに、戦車馬が勢い良く飛び出しました。踏み荒らされた出発点
はデコボコです。
 隣の戦車にぶつかっていく戦車、それをかわそうとする戦車の中、ヘリ
オス、ハイアシンス、クシポスの戦車が後ろの戦車たちをグイグイと引き
離します。
 ヘリオスとハイアシンスは鼻先で先頭を時折入れ替えるだけで、その少
し後ろでクシポスがピッタリついています。
 もちろん、ハイアシンスの馬車がトラブルを起こすのを虎視眈々と待っ
ているのです。
 そして、ゴールの前で、ハイアシンスが戦車馬に最後の力を振り絞るよ
うに手綱を締めると、ハイアシンスが前に出て、ヘリオスの差が一気に広
がります。
 ヘリオスも負けじと手綱を握ったとき、使い魔が仕掛けた魔法の石が赤
く光ったかと思うと、ヘリオスの戦車の片方の車輪がクシポスに向けて飛
んできます。
 クシポスは、ハイアシンスの戦車がそうなるとばかり思っていたので、
驚きましたが、なんとかその車輪にぶつからずに済みました。
 ヘリオスの馬車はバランスを崩して、ヘリオスもろとも転がり、戦車馬
にひきづられて進みます。
 一方ハイアシンスは、ヘリオスの戦車がどうなったかを知らずにゴール
し、次にヘリオスを引きずる戦車馬、クシポスの戦車がゴールしました。
 ハイアシンスは、右腕を上げて、その人差し指は、西風の神殿の旗に向
けられ、勝利宣言をします。
 しかし、ハイアシンスが様子がおかしいことに気がつき、後ろを振り向
くと大怪我をしたヘリオスを目にしたのです。
「ヘリオース!」
 ハイアシンスは、危険を顧みず、まだ勢いよく突き進む馬車から飛び降
ります。さすがのハイアシンスもバランスを崩して転びました。
 それでも、ハイアシンスは、すぐに立ち上がり戦車に引きずられるヘリ
オスを助け出します。
 観客はハイアシンスの勇気と行為を称え、大きな拍手をします。
 そして、控えていた医師が大急ぎで、ヘリオスを診察します。
「こりゃひどい。手遅れだ」と医師
「たのむ、俺の出来ることならなんでもする」
「無理だ、これほどの大怪我から救うには、西の神殿にあるヒアシンスの
球根でもなければ無理だ。それも、日没前に持ってこなければ」
「だったら、オレがもってくる」
 ハイアシンスは必死に叫びますが、医者は首を振ります。
「それは無理だ。西の神殿は、塩の森を大きく迂回していかねばならない。
 遠すぎる」
「だが、塩の森を通れば往復できる」
 ハイアシンスの言葉に医者はおもわず、震え上がりました。
 なぜなら、西風の神殿に行く近道の塩の森を通って帰ってきた者はいな
いからです。
「それこそ、無理な話だ」医者はハイアシンスを止めます。
「なにを、やりもしないことを無理だと決め付けるのだ。
 立ち止まって、考えるだけじゃ、なにも解決なんてしない。
 ヘリオスを助けるためなら、塩の森ぐらい往復してみせる」
 ハイアシンスは、すぐさま西風の神殿に向けて走り出しました。
 コロシアムにいたすべての人は、ハイアシンスの勇気を称え、西風の神殿の
旗もまた、ハイアシンスを称えるように力強くなびいていました。

 さてさて、ハイアシンスは、無事に西風の神殿から、ヒアシンスの球根をもってこれるかな?
 それは次回のおたのしみ。

ヒアシンスの絆< 後編/a>

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